June 23, 2009

Cheer up! when you feel down...

Litaliana_in_algeri気分が滅入ったり落ち込んだとき、暗い音楽を聴くのが良いという識者もいるようだが、個人的にはやはり明るく楽しい音楽を聴いて元気(たとえ空元気でも)を出したいと思う。

人によってそれぞれ感じ方に違いはあるであろうが、貴方がもしクラシック音楽を聴くことに抵抗がなければ、太鼓判を押せるのはロッシーニのオペラ・ブッファ(コミック・オペラ)である。個人的に特にお勧めするのは「アルジェのイタリア女」(L'Italiana in Algeri)である。時代に遅れてやってきた天才ロッシーニが21歳のとき1ヶ月あまりで書き上げたスピード感や笑いと素晴らしいメロディに満ちあふれた超傑作オペラである。

ストーリは荒唐無稽で、いわゆるオペラにありがちな深刻な恋愛模様もなく、ひたすら笑える内容である。ドタバタ喜劇ではあるが、演じる歌手たちにとっては超絶技巧の歌唱力と演技力が要求される非常にやっかいなオペラでもある。

このオペラ、どこを聴いても元気をもらえるがその真骨頂ともいえるのは第一幕のフィナーレである。意味不明な歌詞での騒々しい重唱が繰り広げられるシーンはイタリア語など全く分からなくとも笑えること請け合いである。

個々の歌手にあてがわれた超絶技巧を要するソロのアリアも素晴らしいのだが、このオペラではそれ以上に重唱の部分が見事である。その中でもとりわけ個人的に大好きなのが、主役のイザベッラ(メゾ・ソプラノ)とタッデーオ(バス)の二重唱である”Ai capricci della sorte”(運命のきまぐれに)。乗り合わせていた船がアルジェリアで海賊に襲われ、今後の成り行きにくよくよ心配を巡らすタッデーオに対しイザベッラは成るようにしかならない(sarà quel che sarà)と全く意に介さない。いつの世も女性は強い!

Youtubeにこのデュエットの稀代の名演奏とも言うべきヴィデオがアップロードされているのでご紹介しておく。特にイザベッラを歌うマリリン・ホーンは20世紀のロッシーニ・ルネサンスを主導したアメリカ出身の世界遺産・人間国宝級のメゾ・ソプラノ。若い時に比べ、時として凶暴ともいえる声の威力は減じたものの代わりに柔軟性を獲得しており後半に展開されるアジリタのテクニック(07:20~)は全く衰えていない。

冒頭のレチターヴォの部分が退屈な方は、01:20からこれぞロッシーニという単純ながらも躍動感あふれるメロディを楽しんで頂けると思う。


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March 15, 2009

Dazzling,Sparkling,Shining - Team☆800 3rd concert

Team8001本日の午後、先に告知させて頂いた”Team☆800 3rd concert”を聴きに行ってきた。750人ほど収容できる会場は聴衆で7~8割方が埋まっていた。
”Team☆800”は団員がよく通っていた飲み屋の名前に因んで「やちょー」と呼ぶそうである。結成3年目のアマチュア吹奏楽団で43人のメンバー中の約1/3が塾應援指導部吹奏楽団出身だそうである。そういえば、神宮の応援席でかつて見かけた顔がちらほらと舞台に乗っていた。


≪メンバー≫
Team8002

オープニングはチャップリン作曲の映画”モダンタイムス”の”Smile”。スタンダード・ナンバーのバラードであるが、コンサートのスタートで「暖機運転?」というちょっと微妙な雰囲気だった。しかし、2曲目のジョー・ザビヌルの”Birdland”から一気にトップギアに。第一部は”優しい雨の中で”(ロバート・W・スミス)、
”Ride”(サミュエル・R・ヘイゾ)と続いたが、Team☆800はメンバーの出自のためか華やかでアップテンポの曲の方がその能力がより発揮されるようである。

第二部は”ドラゴンクエストIV 導かれし者たち”(すぎやまこういち)いわゆるドラクエIVの全曲演奏である。”ひろや”さんがメンバー中ではかつてこのRPGを一番やっていたと自負していたので指揮を自ら買って出たそうで、流石にゲーム中の各場面(画面)を彷彿をさせる演奏だった。まさかドラクエIVの全曲を生演奏で聴けるとは思っていなかったので、非常に貴重な体験であった。こうやって吹奏楽で聴いてみると、すぎやまこういちの音楽はよく出来ていると改めて感心した。

≪プログラム≫

Team8003Team8004

≪Team☆800≫
Team8005

”ひろや”さんの吹くトランペットはこれまで何度も聴いていたのだが、全てオープンエアの環境(ようするに球場での応援演奏)であり、ホールで聴くのはこれが初めての機会だった。球場でも明るい音色で力強く突き抜けてくるトランペットを充分実感していたが、果たして室内では?いや、凄すぎる。正に煌めき、輝き、弾けていた。来週の甲子園に応援に行く元気をもらった!

≪2008年11月3日 秋季関東大会@保土ヶ谷球場≫

「得点若き血」(06:30~)他で”ひろや”さんのトランペットのハイ・ノートが飛んでくるのを確認できる。


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March 10, 2009

Invitation to Team☆800 3rd concert

吹奏楽のコンサートのお知らせです。大田区の吹奏楽団である”Team☆800”の第3回演奏会が3月15日に開催される。この”Team☆800”には昨年塾高野球部のオリジナル・チャンスパターン「烈火」を作曲してくださった”ひろや”さんが所属されている。”ひろや”さんは法律学科のご出身で塾應援指導部吹奏楽団で活躍され、現在塾野球部や塾高野球部応援の際に演奏されているタイタン・シリウス・アラビアンコネクションなどの作曲者でもある。

”ひろや”さんは甲子園のアルプススタンドはもとより県大会での応援演奏にも度々駆けつけて下さっている。昨年の関東大会2回戦が日吉祭と重なったため現役吹奏楽部員が保土ヶ谷に来ることができずにOBバンドが臨時編成された際、”ひろや”さんの華麗で力強いトランペットの音色を覚えておられる方もいらっしゃると思う。3月15日にはセンバツの組み合わせも決定しており、甲子園の応援に行く前にお時間がある方は是非とも”ひろや”さんと”Team☆800”を応援する意味でこのコンサートに足を運んで頂ければ幸いである。


≪Team☆800 3rdコンサート≫

2009年3月15日(日) 13:00開場 13:30開演

入場無料

大田区民センター 音楽ホール

JR京浜東北線、東急多摩川線・池上線 蒲田駅 西口

http://www.city.ota.tokyo.jp/shisetsu/hall/kumin_c/index.html

曲目

・Ride / S.ヘイゾー

・「ウィルソン組曲」より優しい雨の中で / R.W.スミス

・バードランド / J.サヴィヌル

・吹奏楽組曲「ドラゴンクエストIV 導かれし者たち」 / すぎやまこういち

1.序曲
2.王宮のメヌエット
3.勇者の仲間たち
(間奏曲~戦士はひとり征く~おてんば姫の行進
 ~武器商人トルネコ~ジプシー・ダンス~ジプシーの旅~間奏曲)
4.街でのひととき(街~楽しいカジノ)
5.勇者の故郷~馬車のマーチ
6.恐怖の洞窟~呪われし塔
7.エレジー~不思議のほこら
8.のどかな熱気球のたび
9.海図を広げて
10.栄光への戦い(戦闘-生か死か-~悪の化身)
11.導かれし者たち

尚、”ひろや”さんはメインである「ドラゴンクエストIV 導かれし者たち」の指揮もされるそうである。

Yacho2009_2
Team☆800


烈火

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March 20, 2006

The 46th Regular Concert ~ The Keio High & Keio Girl's High Wagner Society Orchestra

塾高と女子高の文連部活の雄の一つであるいわゆる高ワグ、ワグネル・ソサエティー・オーケストラの第46回定期演奏会が3月20日に池袋の東京芸術劇場大ホールで行われた。同日に塾高&女子高のマンクラ(マンドリン・クラブ)と楽友会の定演が重なっていたにも係わらず、会場は8割以上の入りで大学ワグネルと同様高ワグも集客力がある。


the_46th_wagner≪曲目≫
信時潔:慶應義塾塾歌(小田島常芳編)
ブラームス:大学祝典序曲
ワーグナー:歌劇「リエンツィ」序曲
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調
学生指揮:志垣 阿佐樹

恒例のワグネル部員アレンジによる塾歌の演奏で始まったのだが、正直言ってこの時点では「乱れたアンサンブル+外れた管」×「若気の至り」に2時間近く付き合うことを覚悟していた。特にリエンツィの序曲はかなりテクニカルな曲であるし、アマオケでは抜群の人気を誇るチャイ5も決して易しい曲ではない。この想いは大学祝典序曲の途中までは変わらなかったのだが、この曲の後半から管が当たりだしオーケストラ全体が落ち着き安定してきた。

リエンツィ(ホルライザー指揮のシュターツ・カペレ・ドレスデンの録音が秀逸)の序曲は、このオペラ全体を凝縮したドラマティックかつ華麗な音楽で、演奏するオーケストラにはそれなりの力量が要求される。しかし、今回の高ワグはこの難曲で吹っ切れたようにテイク・オフを果たした。後半の行進曲の部分ではモメンタムを感じさせる演奏を聴かせてくれた。

チャイ5はいわゆる「運命の主題」といわれている旋律が全楽章に登場し、ちょっとあざとい感じもあるのだが展開は聴き手にとっても分かりやすく、標題こそ付いていないが非常に人気の高い曲である。演奏者にとってもチャイコフスキーの美しいメロディが満載でソロの聴かせ所も数多くあり、アマオケの演目としては人気の1~2位を争う曲である。

果たして当夜のメインであるチャイ5は?結論から先に言うと、こちらの期待を良い意味で大きく裏切るパフォーマンスで正直言って吃驚した。冒頭の塾歌を演奏したオケとは全く違うオケの感があった。第1楽章ではチェロパートの非常に感じいった演奏でつかみはOK。管楽器のソロ・パートも酷く外れることはなかった。特筆すべきは、第2楽章でホルントップの鈴木さんが素晴らしい見事なソロを聴かせてくれたことである。チャイコフスキーがバレー音楽で培ったワルツの第3楽章は優美で軽快というよりは前進するパワーを感じさせる演奏であったし、締めくくりの最終楽章は(主題がホ長調で現れる)豪壮な構成であるが、この曲の持つ大きさに負けない緊張感を湛えた直向きな演奏を繰り広げてくれた。2拍子への導入部の小田島くんのティンパニも勢いがあり非常に良かった。全般に「運命の主題」の持つメランコリックな雰囲気よりは、終楽章のクライマックスに象徴される力強い未来への希望を志向する若さ溢れる解釈だったように思われる。これは志垣くんの的確な指揮振りにも充分にあらわれていた。

アンコールでは同じチャイコフスキーの胡桃割り人形から「トレパーク」を一気呵成に演奏して定演は終了した。ほぼ1年間に及ぶこの定演に向けた高ワグ諸君の練習と努力はここに見事に報われた。久しぶりに若さと情熱溢れる演奏を聴くことができ大いに満足した時間を過ごすことができた。




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February 20, 2006

Beim Schlafengehen

いやはや、昨年と同様な轍を踏み「Blog冬眠症候群」を罹ってしまい、わざわざご訪問頂いた皆さまのご期待(?)を裏切ってしまい誠に申し訳ない次第でここに謹んでお詫びさせて頂きます。何卒、ご容赦のほどを。

何度目の復活か本人自身も定かではないのだが、復帰第一弾は昨日(1月19日)に久しぶりに聴きに伺ったアマチュア・オーケストラ「ザ・シンフォニカ」の第39回定期演奏会の話題。


ザ・シンフォニカ第39回定期演奏会

日時 2006年2月19日(日)14:00~
場所 すみだトリフォニーホール 大ホール

ブラームス:ハイドンの主題による変奏曲
R.シュトラウス:四つの最後の歌 (ソプラノ:大倉由紀枝)
プロコフィエフ:交響曲第5番

指揮 山下 一史


このオーケストラはアマチュアとしてはハイ・スタンダードを維持しており、概ね期待を裏切らない演奏を聴かせてくれる。時としてプロのオーケストラがルーティンに堕した時の演奏よりも「感じた」演奏を繰り広げる場合も間々ある。古くからの知人の何人かも所属しており、時々弊blogにコメントを頂く『奥田安智』氏から「今度の定演では、リヒャルト・シュトラウスの四つの最後の歌を演る」という連絡を頂き、一も二もなく演奏会に駆けつけた。

自ら以前よりオペラを中心にシュトラウス好きを公言しているのだが、この作曲家の最晩年の作ともいえる「四つの最後の歌」(Vier letzte Lieder)は格別の大好物で3度の飯よりも好きかもしれない(ちょっと大袈裟?)。個人的にはシュトラウスといえば「ソプラノ」と「ホルン」に尽きると信じて疑わないので、「薔薇の騎士」「カプリッチョ」、そしてこの「四つ最後の歌」は正に好みのど真ん中ともいえる存在である。この作曲家の人生観照の歌ともいえるオーケストラ伴奏の連作歌曲の中でも通常3番目に歌われる「Beim Schlafengehen」は特段の気に入りの作品である。

今回のソリスト大倉由紀枝女史は、実際のオケをバックにしてこの曲を歌うのは初めてとか。声の質はいわゆるリリコ・スピント(個人的にはハイ・ソプラノで歌われるのも好きであるが)でこの曲を歌うには申し分ないのだが、ご本人が歌詞のニュアンスを大切にするあまり慎重になったのか、あるいは聴いていた席の位置のせいか、期待していたほどには声が届いてこなかったのは残念であった。

父親がバイエルン歌劇場のホルンのトップを務めていたためかシュトラウスはオーケストラ、とくにオペラにおいてホルンを非常に効果的に使い美しい旋律の数々を遺しているのは夙に有名である。この「四つの最後の歌」の「September」と「Beim Schlafengehen」の最後にホルンの聴き所がある。我が畏友の奥田氏のソロであるが、曲の構成的に後出しジャンケン風な「September」においては見事に直球ど真ん中を突いたストライクを決めた!ご本人曰く「ホルン吹き泣かせ」の「Beim Schlafengehen」では惜しくも僅かに高めハズレたか?というのが無責任な素人的感想である。演奏後、奥田氏は「個人的には悔いが残る」と仰っておられたのだが、これは恐らく「Beim Schlafengehen」の方ではなかったかと拝察した。しかし、素人が推察するのは甚だ失礼にあたるとは思うが、この楽器の名手であるストランスキーやペーター・ダムの音がひっくり返った演奏を聴いたこともあるので、あの程度なら全く問題ない。(常に完璧だったと想像できるのは、デニス・ブレインくらいか?)尚、コンサート・マスターの森田氏が「Beim Schlafengehen」で見事なソロ・ヴァイオリンを聴かせてくれたとこも付言しておく。

ブラームスのハイドン・ヴァリエーションでは木管や弦がやや「暖まって」いないかな?という印象もあったが、プロコフィエフの5番のシンフォニーではこのオケの実力が遺憾なく発揮されたといえる。社会主義リアリズムに帰依して作曲されたと言われている、この曲であるが第2楽章などでは時として人の気持ちをはぐらかすようなプロコフィエフ独特のモダニズムを感じさせる旋律を楽しむことができた。



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January 13, 2006

Obituary ~ Birgit Nilsson

Birgit Nilsson, Soprano Legend Who Tamed Wagner, Dies at 87 (N.Y.Times)

Nilsson20世紀後半の最高のワグネリアンでドラマティック・ソプラノの一人である、ビルギット・ニルソンBirgit Nilsson)が昨年の12月25日に出身地であるスウェーデン南部のVästra Karupで亡くなった。享年は87歳。

彼女はオペラの公演では1967年の大阪フェスティヴァル・ホールでのバイロイトの引っ越し公演(但し、オケはN響)の「トリスタンとイゾルデ」、そして1980年のヴィーンのシュターツオパーの「エレクトラ」で来日したことがある。彼女の経歴に関しては、上記のN.Y. Timesの追悼記事や日本語版Wikipedia英語版Wikipedia、そして弊blogで彼女の誕生日に書いたエントリ”The nordic icy Diva”をご参照ください。

かつて、第二次大戦後の代表的なワグネリアン・ソプラノであった、ニルソン、メードル、ヴァルナイの3人が集まってバイエルン放送のTV番組で語り合った内容が文章に起こされているサイトがあるのでご紹介しておく。英語ではあるが、非常に興味深いことが語られている。



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December 09, 2005

Christmas Greetings ~ Julens sånger

christmas_greetingsクリスマス・アルバム・シリーズの第3弾。本来は違うアルバムをご紹介する予定だったのだが、日頃のCDの整理が悪く発見できず、偶然手にしたのがこの”Christmas Greetings ~ Julens sånger”。内容はスウェーデン出身で20世紀後半に活躍した最高のドラマティック・ソプラノ、ワグネリアンの一人と絶賛を浴びていたビルギット・ニルソン(Birgit Nilsson)とドメスティックに活躍していたヘレーナ・ドーセ(Helena Döse、ソプラノ)、トード・スレッテガード(Tord Slättegård、テノール)、そしてかつてデューク・エリントンと共演し一部のジャズ・ファンの間ではその名が知られているアリス・バブス(Alice Babs、ソプラノ)達が歌った録音を寄せ集めた北欧はスウェーデンのクリスマス・アルバム。ジャズ・シンガーと知られているアリス・バブスもここではクラシックを歌っている。”Julens sånger”はスウェーデン語でクリスマス・ソングの意味。

このアルバムの目玉ともいえるニルソンの録音は1963年と正に彼女が世界中のオペラ・ハウスで飛ぶ鳥を落とす勢いの全盛期のものであり、クリスタルを思わせるあの特徴のある透明な声でグスタフ・ヴァサ教会のオルガンをバックに立派な歌唱を聴かせてくれる。あえて難を言えば、彼女自身はオペラを歌うときよりは大分抑制はしているようだが、やはりクリスマス・ソングにしてはややスケールが大きすぎて立派するぎることか?時として悲劇のヒロイン、戦乙女のブリュンヒルデが無理矢理の笑顔を作ってキャロルを歌っている風情がなきにしもあらず。

それに比べ、イェーテボリ生まれのヘレーナ・ドーセはややスピントが効いたリリック・ソプラノで如何にも教会で聴く(こちらもストックホルムのグスタフ・ヴァサ教会での録音)クリスマス・キャロルという雰囲気に溢れた端正な歌唱を聴かせてくれる。ニルソンのオペラティックな歌よりはずっとインティメートな気分にさせてくれる。トード・スレッテガードは決して輝かしい声の持ち主ではないがリリカルで甘さと清潔感を漂わせた声で淡々と歌っているのが好印象である。特にシベリウスのクリスマス・ソングでは北欧の雪に覆われた教会でのクリスマスという雰囲気が良く出ている。

アリス・バブスは柔らかなリリック・ソプラノでバッハの「イエスよ、汝はわがもの」(BWV470)、「イエスよ、わが信仰の誉れ」 (BWV472)、「御身がともにあるならば」 (BWV508、バッハの作ではないという説もある)とモーツァルトの有名なモテット「踊れ、喜べ、汝の幸いなる魂よ」を歌っているが、時として声の支えが甘くなる(特に高域で)ことがあり、フォーカスがぼやける瞬間が間々ある。スケール感はないものの、いかにも癒し系の歌唱を聴かせてくれる。

このCDを持っていたこと自体、自分自身でも忘れており、思わぬ掘り出しもを手にした気分になった。しかし残念ながらこのアルバムはかつてスウェーデンのBlue Bellレーベルから出され(恐らくLP?)、その後Swedish Societyから発売されたものであるが、ネットで調べてみるとやはり現在は廃盤になっている。超名盤という訳ではないが、北欧(スウェーデン)のクリスマスという雰囲気を楽しむという意味では、中古盤で見つけられた場合は購入しても決して損はないと思う。

en_klassisk_julただ、不思議なことを発見した。このCDはSwedish SocietyのSCD 1018という番号なのだが、現在はこの番号は”En Klassisk Jul”(英語のタイトルはChristmas Greetings From Sweden)というタイトルとなっており、一部旧SCD 1018からの録音も含まれているが、異なったCompilationになっており、全く違うアルバムである(こちらも現在廃盤か、入手はあまり容易ではないようである)。この同一カタログ番号で異なるアルバムの存在、もし事情に詳しい方がおられればお教え願いたいものである。

Christmas Greetings ~ Julens sånger(Swedish Society SCD 1018)

Birgit Nilsson
1.Ave Maria - J.S.Bach-C.Gounod
2.O Helga natt O holy Night - A.Adam
3.Panis angelicus - C.Franck
4.Stilla natt Silent Night - F.Gruber-J.Mohr

Helena Döse
5.Care selve from Atalanta - G.F.Handel
6.Hark! The Herald Angels Sing - F.Mendelssohn-Bartholdy
7.Jerusalem, die der tötest die Proheten from St. Paul - F.Mendelssohn-Bartholdy
8.Betlehems stjärna The Stars of Bethlehem - Alice Tegnér

Tord Slättegård
9. Psaltare och Lyra Psaltery and Lyre - G.Nordqvist - E.A.Karlfeldt
10.JulvisaChristmas Song - J.Sibelius-Z.Topelius
11.Cavatina: Sei getreu - F.Mendelssohn-Bartholdy

Alice Babs
12.Jesu, Jesu, du bist mein(BWV 470) - J.S.Bach
13.Gott, wie gross ist deine Güte(BWV 462) - J.S.Bach
14.Bist du bei mir(BWV 508) - J.S.Bach
  Exsultate jubilate(KV 165) - W.A.Mozart
15.Allegro
16.Recitativo
17.Andante-Allegro non troppo



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December 06, 2005

An Old Met Christmas

先にご紹介したザ・シンガーズ・アンリミテッドのクリスマスがアカペラのモダーンかつ瀟洒な雰囲気に溢れたアルバムとすれば、今回ご紹介するのはその対局ともいえる超クラシカルでフランス料理に例えれば伝統的なこってりとした味わいのクリスマス・アルバム。

an_old_met_christmasこの”An Old Met Christmas”は1987年に”A New Met Christmas”(確かこういうタイトルだった思う)とともにMetropolitan Opera GuildからBMGを通じてリリースされたアルバムである。Googleで検索を掛けてみたのだが、どちらも既に廃盤になっているようであり、John McCormack Societyのサイトのこんなページしか引っ掛からなかった。オペラファンの方にはタイトルから容易に想像がつくように、このアルバムはかつてニュー・ヨークのメトロポリタン・オペラを彩った名歌手達が歌うクリスマス・ソングを寄せ集めてCD化されたものである(殆どがかつてはRCAなどからリリースされていた録音である)。

”Old”と”New”は単に古い新しいという意味ではなく、1966年に現在のリンカーン・センターにオープンしたオペラ・ハウスを”New Met”と呼び、それ以前の1883年の創設以来ブロードウェイの39th Streetにあった建物が”Old Met”と呼ばれている。従って、このアルバムには主として”Old Met”で活躍したスター・オペラ歌手の歌うクリスマス・ソングが集められている。残念ながら”New”のCDは入手し損なったので詳細は分からないのだが、”New Met”で活躍したオペラ歌手たちのクリスマス・ソングが集められていたはずである。

この”Old”に集められた録音の年代のスパンは非常に広く、1916年から1968年に及んでいる。アルバムの冒頭では、20世紀初頭のゴールデン・エイジを代表するKing of Tenorであるエンリコ・カルーソによる19世紀のフランスのユダヤ人作曲家アドルフ・アダムによる最もポピュラーなクリスマス・キャロル一つ、原題で”Cantique de Noël”(英語では”O Holy Night”)を意外ともいえる恣意的な歌い崩しもなく思いのほか端正な歌唱を聴くことができる。2曲目はドイツ・オペラにおいては比類なき名ソプラノと称えられたロッテ・レーマンによる”O Come All Ye Faithful”は、彼女の歌手としては晩年期の録音であり揺蕩う夕映えを思わせる人生観照の歌唱を堪能することができる。そして、1955年に黒人歌手としは初めてメトロポリタン・オペラにヴェルディのオペラ「仮面舞踏会」のウルリカ役で登場したアルト歌手、マリアン・アンダーソンの”Angel's Song”もスピリチュアルな名唱である。

現在廃盤中なので、このアルバムをお勧めすることはできないのだが、正直なところ個人的にはこれを全部聴き通すには少々カロリーが高すぎるという印象を持ったことも事実である。

1.Adam Cantique de Noël - Enrico Caruso
2.Wade O Come All Ye Faithful - Lotte Lehmann
3.Yon Gesú Bambino - Giovanni Martinelli
4.Humperdinck Weihnachten - Ernestine Schumann-Heink
5.Traditional The Holy Child - John McCormack
6.Schubert Ave Maria - Rosa Ponselle
7.Brooks-Redner O Little Town of Bethlehem - Richard Crooks
8.Gruber Silent Night - Helen Traubel
9.Bucky Angel's Song - Marian Anderson
10.Bach-Gounod Ave Maria - Patrice Munsel
11.Traditional Es blühen die Maien - Hilde Gueden
12.Willis-sears It Came Upon the Midnight Clear - Brian Sullivan
13.The Friendly Beasts - Risë Stevens
14.Traditional God Rest Ye Merry,Gentlemen - Eileen Farrell
15.Franck Panis Angelicues - Franco Corelli
16.Traditional The First Noël - Roberta Peters
17.Traditional Angels We Have Heard on Hiigh - James McCracken
18.John Jacob Niles I Wonder as I Wonder - Dorothy Kirsten
19.Adam O Holy Night - Leontyne Price



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November 29, 2005

Belle nuit, ô nuit d'amour

近頃、書きたい(言いたい)ことは多々あるのだがなかなかエントリとして纏められず、このまま再び冬眠状態に陥ってしまう危険が無きにしもあらずなので、取りあえずは手近にあったCDをネタにしたエントリ。アメフトの後にはいかにも座りの悪い話題ではあるがご容赦のほどを。

otter_offenbach以前に”Watercolours”というエントリでも取り上げたスウェーデンの”Cool Beauty”、アンネ・ソフィー・フォン・オッターの”Anne Sofie von Otter sings Offenbach” 。その内容はアルバムタイトルの通り、オッターがマルク・ミンコフスキー指揮ルーブル宮音楽隊(Les musiciens du Louvre、もっとましな日本語訳はないのか!?)のサポートを得てジャック・オッフェンバックのオペレッタやオペラの中からエール・シャンソン・バラードなどを歌ったものである。

音楽界で話題になっているかどうかは寡聞にして知らないが、近年のヨーロッパのオペラハウスでは”オッフェンバック・ルネサンス”の兆候がなにきしもあらずの状況を感じる。以前足繁く通った、アレクサンダー・ペライラ率いるチューリヒ歌劇場におけるアーノンクールのイニシアティヴによる一連のオッフェンバック・オペレッタ上演がハイ・スタンダードであることは一部の筋では良く認識されおり、これが一つの極とすれば、もう一方がフランスにおけるこのマルク・ミンコフスキーによる活動であろう。

1819年ドイツのケルンに生まれたオッフェンバックは本名をヤーコプ・レヴィ・エーベルストというユダヤ人で、1833年にチェロを修めるためにパリに赴きそのまま当地で作曲家として活躍した。フランス革命後紆余曲折はあったものの近代市民社会が形成され、芸術の主たるパトロネージュがそれまでの王侯貴族からブルジョワジーに移行した頃のオペレッタの生みの親とも言うべき作曲家であった。ある意味では音楽的サブ・カルチャの元祖的存在ともいえ、当時の彼の作品の人気は絶大なものであった。しかし、流石に典型的な「時代の子」であった故か没後(1880年)は出身地ドイツを除いてフランスでもその人気は急速に凋落していった。唯一の未完のオペラ「ホフマン物語」を除いて実際の舞台上演では忘れ去られていたオッフェンバックが20世紀末から復興してきたことは非常に興味深いものがある。

さてこのアルバムでのオッターのあるが、オペレッタであるとはいえ気楽に歌い流すということはせずあくまでも正当派の端正な歌唱を聴かせている。彼女のスタイルは同じオッフェンバックを得意とするアーノンクール一派ともいえるブルガリア出身の人気メゾ・ソプラノ、ヴェッセリーナ・カサロヴァともかなり趣きを異にしている。オッターはイタリア・オペラを除けば広大なレパートリを誇っているが、どんなオペラやリートにおいても如何にもインテリジェンス溢れる生真面目なスウェーデン人という居住まいを崩すことはない。従って、この北の政所さま(我が畏友、奥田氏が使うオッターへの尊称)の歌にはオッフェンバックの音楽が持つ破天荒さやある種の退廃的な雰囲気は望むべくもない。ただ、あくまで個人的な趣味だが、明晰で愉悦に満ちたスタイリッシュな彼女の歌唱にはオッフェンバックを聴く上では何の支障も感じてはいない。

尚、つい最近この録音時に録画されたと思われる”オッフェンバックの夕べ”というDVDも発売されたようである。因みに、このエントリのタイトルは「ホフマン物語」で最も有名なバルカローレの歌詞の出だしの部分であり、勿論このアルバムでも聴くことが出来る。


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November 16, 2005

Can't take my eyes off you


復活以来、少々硬い話題?が続いたので、昨日の深夜眠い目をこすりながら観た映画に登場した昔の美人大女優のお話。

michele_morgan七つの大罪』(1952)という、かつてフランス映画でダントツの美男子として知られたジェラール・フィリップが狂言回しを演じ、聖書の「七つの大罪」をテーマとしたオムニバス映画でその第六話に登場したミシェル・モルガン(Michèle Morgan、1920.2.29 - )がその人。

コケティッシュとかセクシーという言葉からは全く縁遠い、ほお骨の高い尖った顔立ちの人であるが、ワタシの心を捉えて離さない(ご本人にはその気はないであろうが)女優の一人である。この人の魅力はなんと言ってもその目である。すい込まれてしまいそうなこの目で見つめられたら・・・。この人の全盛期はモノクロ映画の時代であり、カラー映画で初めて確認できた瞳は想像していた通りあるときはブルーあるときは鳶色にも見える非常に薄い色であった。

スナップ写真では分からないが、この人の瞳は演技していると、左右の大きさが明らかに違って見える瞬間がある(右が大きく、左が小さい)。その時は決まって、右の眉がつり上がる。これが彼女の最も好きな表情の一つである。残念ながらその全盛期の映画をリアルタイムで鑑賞できなかったが(というか、店主はそれほどは齢を重ねてはいないので、念のため)、彼女のデビュ作でジャン・ギャバンと共演した『霧の波止場』(1938)や『愛情の瞬間』(1952)、ジェラール・フィリップと共演した『狂熱の孤独』(1953)や『夜の騎士道』(1955)では彼女の蠱惑的な瞳と抑制の効いた威厳すら感じさせる演技を十二分に楽しむことができる。


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