The 46th Regular Concert ~ The Keio High & Keio Girl's High Wagner Society Orchestra
塾高と女子高の文連部活の雄の一つであるいわゆる高ワグ、ワグネル・ソサエティー・オーケストラの第46回定期演奏会が3月20日に池袋の東京芸術劇場大ホールで行われた。同日に塾高&女子高のマンクラ(マンドリン・クラブ)と楽友会の定演が重なっていたにも係わらず、会場は8割以上の入りで大学ワグネルと同様高ワグも集客力がある。
≪曲目≫
信時潔:慶應義塾塾歌(小田島常芳編)
ブラームス:大学祝典序曲
ワーグナー:歌劇「リエンツィ」序曲
チャイコフスキー:交響曲第5番ホ短調
学生指揮:志垣 阿佐樹
恒例のワグネル部員アレンジによる塾歌の演奏で始まったのだが、正直言ってこの時点では「乱れたアンサンブル+外れた管」×「若気の至り」に2時間近く付き合うことを覚悟していた。特にリエンツィの序曲はかなりテクニカルな曲であるし、アマオケでは抜群の人気を誇るチャイ5も決して易しい曲ではない。この想いは大学祝典序曲の途中までは変わらなかったのだが、この曲の後半から管が当たりだしオーケストラ全体が落ち着き安定してきた。
リエンツィ(ホルライザー指揮のシュターツ・カペレ・ドレスデンの録音が秀逸)の序曲は、このオペラ全体を凝縮したドラマティックかつ華麗な音楽で、演奏するオーケストラにはそれなりの力量が要求される。しかし、今回の高ワグはこの難曲で吹っ切れたようにテイク・オフを果たした。後半の行進曲の部分ではモメンタムを感じさせる演奏を聴かせてくれた。
チャイ5はいわゆる「運命の主題」といわれている旋律が全楽章に登場し、ちょっとあざとい感じもあるのだが展開は聴き手にとっても分かりやすく、標題こそ付いていないが非常に人気の高い曲である。演奏者にとってもチャイコフスキーの美しいメロディが満載でソロの聴かせ所も数多くあり、アマオケの演目としては人気の1~2位を争う曲である。
果たして当夜のメインであるチャイ5は?結論から先に言うと、こちらの期待を良い意味で大きく裏切るパフォーマンスで正直言って吃驚した。冒頭の塾歌を演奏したオケとは全く違うオケの感があった。第1楽章ではチェロパートの非常に感じいった演奏でつかみはOK。管楽器のソロ・パートも酷く外れることはなかった。特筆すべきは、第2楽章でホルントップの鈴木さんが素晴らしい見事なソロを聴かせてくれたことである。チャイコフスキーがバレー音楽で培ったワルツの第3楽章は優美で軽快というよりは前進するパワーを感じさせる演奏であったし、締めくくりの最終楽章は(主題がホ長調で現れる)豪壮な構成であるが、この曲の持つ大きさに負けない緊張感を湛えた直向きな演奏を繰り広げてくれた。2拍子への導入部の小田島くんのティンパニも勢いがあり非常に良かった。全般に「運命の主題」の持つメランコリックな雰囲気よりは、終楽章のクライマックスに象徴される力強い未来への希望を志向する若さ溢れる解釈だったように思われる。これは志垣くんの的確な指揮振りにも充分にあらわれていた。
アンコールでは同じチャイコフスキーの胡桃割り人形から「トレパーク」を一気呵成に演奏して定演は終了した。ほぼ1年間に及ぶこの定演に向けた高ワグ諸君の練習と努力はここに見事に報われた。久しぶりに若さと情熱溢れる演奏を聴くことができ大いに満足した時間を過ごすことができた。



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