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May 25, 2007

Pros. and Cons.

塾高野球部の春季公式戦は、春季県大会優勝・関東大会ベスト4という結果で終わった。

関東大会では残念ながら23日の決勝戦に駒を進めることはできなかったが、両大会を通して一戦ごとにチーム力を向上させていったことは、昨年のことを思うと見事な結果を残したといえる。

特に関東大会ではこの夏に向けての大きな収穫と克服すべき課題を確認することができた。

準決勝戦では、甲府商業の2年生ピッチャー米田投手の抜群のピッチングに前日まで絶好調かに見えた塾高打線はヒット3本とほぼ完全に沈黙させられた。米田投手はスピードの緩急・左右へのコントロールで塾高打線をストライク先行で追い込み、三振・内野ゴロで相手ながら見事なピッチングを披露してくれた。この春に塾高が県大会を含めて対戦したピッチャーとしてはNo.1の出来だった。

このように、ヒット数を含めて流れを相手に支配されている試合において、勝機を掴みとる「したたかさ」が塾高野球部の夏への課題である。具体的に言えば、6回裏の守備の乱れ、8回表のノーアウト満塁での無得点、これが与えられた解決すべき最大の課題であろう。野球とは特に攻撃においては失敗が常態のスポーツである。従って、実際にプレイする立場に立ってみれば、チャンスは全て活かせ、ピンチでミスをするな、など言うは易く行うは難しということは理解できる。

ユダヤ系オーストリアの伝記作家として高名を馳せたシュテファン・ツヴァイクに「人類の星の時間」という作品がある。「星の時間」とはその後の自らの運命とその影響の大きさから世の中の状況を一変させてしまうような「凝縮した瞬間」という意味である。(オペラが好きな方は、ツヴァイクとリヒャルト・シュトラウスに関する逸話が弊blogの過去のエントリ”The dark shadow of the coming breakdown”をご参照下さい。)

例えてみれば、昨年の夏の西東京大会で日大三高に押され気味の展開の試合において早実が延長戦で勝利しなければ、その後の甲子園で大活躍した斎藤佑樹というスターは誕生しなかったし、先日のKSBオープンの17番ホールでバンカー・ショットが直接カップインしなければオープン戦最年少チャンピン石川遼も生まれなかったであろう。彼らは正に「星の時間」に遭遇し、そしてそれを掴み取ったと言える。

この人生における一大転機ともいえるチャンスを掴み取るには、実力は勿論ツキや運も味方にする必要がある。もし運命の女神なるものがいるならば、この春は塾高野球部に47年振りの春季県大会優勝という歓喜と、関東大会ベスト4というまるで「天狗になるな!」と言わんばかりのかなりビターでちょっとだけスウィートな贈り物を届けてくれた。月並みな言い方ではあるが、この運命の女神はそれまでに努力を積み重ねてきた者のみにしか微笑みかけ、黄金の果実を与えてくれないことも真実であろう。

昨年秋、選抜への道を目指した秋季県大会において百合丘に敗れたときは、正直言って「このチームは谷間の世代?」という想いを抱いた。年が明け、この3月からの練習試合でもこの想いをなかなか払拭できないでいた。しかし、このチームは春の公式戦において、一戦毎にこちらの期待を超える成長を見せてくれた。

個人的には昨年と最も大きな違いを見せてくれたのは、技術は勿論のこと伊場くんのキャプテンシーだと感じている。ホームベース、ベンチ、バッターボックス、そしてピンチの時のマウンドでの彼の様子・雰囲気は傍目にも昨年のそれとは明らかに違うことが解る。

球威はあるものの、時としてコントロールを乱し独り相撲をしてしまうことがあった左腕田村くんは完投能力を身につけ、自身の調子の良し悪しに拘わらず試合を壊すことなく、味方のミスにも腐らずに投げ抜く精神力を獲得したことは正にエースの自覚と言えよう。

春はちょっと出遅れた右腕只野くんは、控えというよりは先発ピッチャーとしてその才能を開花させつつある。フォームが綺麗すぎる嫌いがないでもないが、2ストライク後の勝負球を是非とも開発して欲しい。

県大会決勝戦でベンチ入りした1年生投手白村くんは、関東大会準々決勝で公式戦先発デビューを果たし、準決勝においても先発登板した。彼のストレートの威力には大きな可能性を感じさせるものがある。ピッチャーに転向して未だ1年もたっておらず、コントロール・変化球等々身につけるべき課題は多々あると思うが、小さく固まらず大きく育って将来塾高を支えるエースに成長して欲しいものである。

塾高が敗れた試合だったのであまり注目されなかったようだが、白村くんに代わって久々に公式戦に登板した3年生黒住くんは球威・球速こそないものの、抜群のコントロールで甲府商のクリンナップの打者を3連続三振と見事なピッチングを披露してくれた。夏の選手権大会でもこのような展開の試合では彼の出番が巡ってくるように思われる。

守備に関しては昨年の秋季大会時に比べると驚く程の進歩を遂げたと言える。ミスをすると怪我が大きい外野に関しては一層の磨きをかける必要があるが、細江くん・千々和くんの三遊間の守備は、時として「神か?」という渕上くんのセンスは置くとして、昨年のチームに比べ地味かつ小型であるが寧ろ安定感がある。

バッティングに関しては、伊場くんに続く大砲として野俣くんは県大会でその才能を開花させ、1~3番を担った溝口くん・矢島くん・山﨑くんは準決勝戦を除き、繋ぐ打線としてよく機能していた。

勝ち進むに従い、ピッチャーの起用に関して厳しくなる夏の選手権大会において、現在のピッチング・スタッフがこのまま夏に向けて更なる安定と成長を果たせば、塾高は大きな可能性を持ったチームに変身できるであろう。その伝統ともいえる攻めに転じたときの破壊力ある打線は継承されており、相手に流れを支配された試合において如何に1点をもぎ取るかという「したたかさ」を身につければ「星の時間」を掴み取ることも決して夢ではない。

24日には中間試験も終わり、これからは日も長くなり暫くは野球に打ち込める時間も取れると思う。県大会・関東大会で貰った宿題に取り組んで頂きたいものである。

「練習ハ不可能ヲ可能ニス」(小泉信三塾長)

Catch the Star!

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Comments

仰られるとおり、佑ちゃんの甲子園出場にしても、先日のゴルフ最年少チャンピォン誕生の劇的なチップインにしても、信じられないような運が大勝負にはついてくることが多いですよね。でも、それは偶然のツキではなくて、はやり日々の練習があったからこそ女神が微笑んでくれたプレゼントなんだと思います。塾高野球部にも微笑んでもらえるよう、我々も一生懸命応援していきましょう。

Posted by: ポポ | May 28, 2007 at 12:56 AM

近頃スターになる男の子は、何故か○○王子の綽名がつくようですが、塾高野球部にも運命の女神に好かれるような王子顔は各種取り揃えておりますので(^^ゞ、あとは「星の時間」に遭遇するための練習あるのみですね!1年生の白村くん、まだあどけなさは残っていますが、その容貌もスターになる可能性は充分。

Posted by: Flamand@擬藤岡屋日記 | May 28, 2007 at 11:27 AM

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