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November 29, 2005

Belle nuit, ô nuit d'amour

近頃、書きたい(言いたい)ことは多々あるのだがなかなかエントリとして纏められず、このまま再び冬眠状態に陥ってしまう危険が無きにしもあらずなので、取りあえずは手近にあったCDをネタにしたエントリ。アメフトの後にはいかにも座りの悪い話題ではあるがご容赦のほどを。

otter_offenbach以前に”Watercolours”というエントリでも取り上げたスウェーデンの”Cool Beauty”、アンネ・ソフィー・フォン・オッターの”Anne Sofie von Otter sings Offenbach” 。その内容はアルバムタイトルの通り、オッターがマルク・ミンコフスキー指揮ルーブル宮音楽隊(Les musiciens du Louvre、もっとましな日本語訳はないのか!?)のサポートを得てジャック・オッフェンバックのオペレッタやオペラの中からエール・シャンソン・バラードなどを歌ったものである。

音楽界で話題になっているかどうかは寡聞にして知らないが、近年のヨーロッパのオペラハウスでは”オッフェンバック・ルネサンス”の兆候がなにきしもあらずの状況を感じる。以前足繁く通った、アレクサンダー・ペライラ率いるチューリヒ歌劇場におけるアーノンクールのイニシアティヴによる一連のオッフェンバック・オペレッタ上演がハイ・スタンダードであることは一部の筋では良く認識されおり、これが一つの極とすれば、もう一方がフランスにおけるこのマルク・ミンコフスキーによる活動であろう。

1819年ドイツのケルンに生まれたオッフェンバックは本名をヤーコプ・レヴィ・エーベルストというユダヤ人で、1833年にチェロを修めるためにパリに赴きそのまま当地で作曲家として活躍した。フランス革命後紆余曲折はあったものの近代市民社会が形成され、芸術の主たるパトロネージュがそれまでの王侯貴族からブルジョワジーに移行した頃のオペレッタの生みの親とも言うべき作曲家であった。ある意味では音楽的サブ・カルチャの元祖的存在ともいえ、当時の彼の作品の人気は絶大なものであった。しかし、流石に典型的な「時代の子」であった故か没後(1880年)は出身地ドイツを除いてフランスでもその人気は急速に凋落していった。唯一の未完のオペラ「ホフマン物語」を除いて実際の舞台上演では忘れ去られていたオッフェンバックが20世紀末から復興してきたことは非常に興味深いものがある。

さてこのアルバムでのオッターのあるが、オペレッタであるとはいえ気楽に歌い流すということはせずあくまでも正当派の端正な歌唱を聴かせている。彼女のスタイルは同じオッフェンバックを得意とするアーノンクール一派ともいえるブルガリア出身の人気メゾ・ソプラノ、ヴェッセリーナ・カサロヴァともかなり趣きを異にしている。オッターはイタリア・オペラを除けば広大なレパートリを誇っているが、どんなオペラやリートにおいても如何にもインテリジェンス溢れる生真面目なスウェーデン人という居住まいを崩すことはない。従って、この北の政所さま(我が畏友、奥田氏が使うオッターへの尊称)の歌にはオッフェンバックの音楽が持つ破天荒さやある種の退廃的な雰囲気は望むべくもない。ただ、あくまで個人的な趣味だが、明晰で愉悦に満ちたスタイリッシュな彼女の歌唱にはオッフェンバックを聴く上では何の支障も感じてはいない。

尚、つい最近この録音時に録画されたと思われる”オッフェンバックの夕べ”というDVDも発売されたようである。因みに、このエントリのタイトルは「ホフマン物語」で最も有名なバルカローレの歌詞の出だしの部分であり、勿論このアルバムでも聴くことが出来る。


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Comments

Flamand様ごぶさたしております。
呼ばれて、のこのこ出てまいりました。
さて文中の「北の政所」という呼称は、
ありがたくもFlamand様から当Blog上で、
じきじきに頂戴したものかと思います。

DVDは2年前の夏にストックホルムで
購入しました。ちょうどクリスマスの時期の
演奏会で、硬いこと抜きに楽しめますよ。

Posted by: 奥田安智 | November 30, 2005 at 12:43 AM

これはこれは、奥田さま。早速のお出まし、誠にありがとうございます。こちらこそ、ご無沙汰しておりますm(__)m。

このアルバムでは、”La Belle Helene”からの1曲に彼女の美質が最もストレートに出ています。ホフマンのバルカローレでも霞漂うような気怠い雰囲気が心地よく、「もう、終わっちゃうの?」って感じ。やはりコミカルな歌ではちょっと堅い(^^ゞ。映像が伴えばまた違った印象になるでしょうが。

Posted by: Flamand@擬藤岡屋日記 | November 30, 2005 at 01:17 AM

TBいただきました。北欧の歌曲で聞いたオッターとオッフェンバックというのは確かに意外な取合せにも思えますが、ABBAなどのポピュラーソングも歌ったり、「軽い」レパートリーにも意欲的に取り組んでいるようですね。

オペレッタといえば、スッペなどは現在実際に上演されることはどのくらいあるのでしょうか?

Posted by: ユウスケ | November 30, 2005 at 03:38 PM

ユウスケさん

コメント、ありがとうございました。

北の政所さまのレパートリはバッロクオペラからポップスまで驚くほど広大であります。エルヴィス・コステロとのコラボ・アルバムなんてのもありました。但し、アタマの良い人ですから、自分に不向きなエリアは巧みに避けています。個人的には「カルメン」だけは如何なものかと思いますが?(これを言うと、奥田氏から石が飛んできそうですが(^^ゞ)

スッペ、私は実際の舞台で聴いた経験はありません。
因みに、Operabase(タダ版)で同じ条件で検索をかけたところ、世界中のオペラハウスでの上演はオッフェンバクが324、シュトラウス(ヨハン)390、レハール400に対して、スッペは僅かに2という惨憺たる結果でした。やるとしても、ヴィーンのフォルクスオパーあたりでしょうね。「美しきガラテア」とか「ボッカチョ」など、有名な作品もあるのですがね。

Posted by: Flamand@擬藤岡屋日記 | November 30, 2005 at 04:37 PM

Flamandさん、トラバありがとうございました。
『君と僕の無限空間』のJannitaと申します。
オッター嬢、イイですよね~!!
クライバー指揮の『ばらの騎士』を見て、一目でファンになってしましいました。
このオッフェンバッハのアルバムはまだ聴いたことありませんが、是非今度試してみようと思います。

なお、こちらのブログを当方のリンクに加えさせていただきました。
これからもよろしくお願いいたします。

Posted by: Jannita | November 30, 2005 at 08:24 PM

Jannitaさま

コメント&TB、ありがとうございました。

ロット、オッター、ボニーの「薔薇」ですね。東京公演の舞台で接したのですが、クライバーの偉大な才能のなせる技か、ある意味非常にユニークな「薔薇の騎士」だったという印象を持っています。

もっとも良く歌っていたのは、クライバーがドライヴするヴィーン・フィルで、3人の女声はまるでそれを引き立てるためのオブリガートのようにも聴こえました。

今後もよろしくお願いします。

Posted by: Flamand@擬藤岡屋日記 | November 30, 2005 at 11:58 PM

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