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June 10, 2005

The Voice of the Lion

ruffo20世紀初頭に”The Singing Lion”と謳われた不世出のバリトン、ティッタ・ルッフォ(Titta Ruffo)は1877年6月10日(9日という説もある)にピサで生まれた。因みに更に22年遡った1865年6月10日にはミュンヒェンにおいてヴァグナーの『トリスタンとイゾルデ』が初演された。

ティッタ・ルッフォ(本名はRuffo Cafiero Titta)は鍛冶屋の息子として生を受け、いかにもイタリアの名歌手という多分に漏れず貧困な大家族の中で幼少期を過ごし、殆ど教育らしい教育も受けなかったと言われている。18歳のときローマにおいてその声を見いだされたルッフォはサンタ・チェチーリア音楽院で当時の大教師Venceslao Persichini(やはり名バリトンであったマッティア・バスティスティーニやジュゼッペ・デ・ルカを育てた)に就いて声楽を学んだ。

オペラ歌手としてのデビューは1898年4月9日、ローマのテアトロ・コンスタンツィでの『ローエングリン』の伝令役であった。20世紀を前にして彼はイタリア中で名声を博する新進のバリトンに成長していた。その後20世紀初頭にコヴェント・ガーデンに『リゴレット』のタイトル・ロールで招聘された際に、ジルダを歌う当時の大プリマドンナであったネリー・ネルバが彼とのリハーサル後、彼女自身が舞台での存在感において圧倒されることを危惧して(所謂「食われる」ことを恐れて)、「私の父親役には若すぎる」と共演を拒絶されたことは有名な逸話である。(一方、ルッフォも「彼女は私の娘役にしては老けすぎている」とやり返したとか。因みにメルバは1861年の生まれのオーストラリア出身の19世紀末のオペラ・ゴールデン・エイジを代表するプリマ・ドンナで、伝説と逸話の宝庫のような人でもあり、いづれ項を改めてご紹介してみたい)

ルッフォは第一次世界大戦時のイタリア陸軍の兵役に就き慰問を行ったというキャリアの中断を除いて、1931年にオペラの舞台を引退するまで最もギャランティの高いバリトンとしてMETを含め世界のオペラハウスに君臨した。

歌手生活を退いたルッフォはイタリアに帰ったが、折からのムッソリーニに率いるファシスト達と鋭く対立し、当時の社会からは排斥され第二次世界大戦が終結するまでは決して安穏な引退生活を送ることができなかったようである。彼は戦後に名誉回復され、1953年7月5日にフィレンツェで亡くなった。

ルッフォが参加したオペラの全曲録音は残念ながら残されていないようであるが、20世紀初頭からかなりの録音が残されている。”The Singing Lion”とう渾名から猛々しい歌唱を想像する向きもあろうが、彼は単に力任せに大きな声で歌いきるといった歌い手ではない。特に彼の歌うヴェルディのオペラのアリアを聴いてみれば、適切な音色のパレットを使い分け見事な心理描写を行っていることが良く解る。強靱さととともにしなやかさを併せ持つインテリジェンスすら感じさせる見事な歌唱である。恐らく、デ・ルカとともに史上最も優れたヴェルディ・バリトンの一人であったと言えよう。”The Voice of the Lion”は「王者の声」と捉えるのが適切なような気がする。

彼の歌を賞賛するする最も有名な逸話は、イタリア・オペラの巨匠の一人であるトゥリオ・セラフィンが晩年に語ったと言われている次の言葉である。

「私は生涯で三つの奇跡に出会った。それは(ローザ・)ポンセル、(エンリコ・)カルーソ、(ティッタ・)ルッフォである」



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