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June 18, 2005

An adoption

kafuかれこれ20年以上のお付き合いをさせて頂いている大先輩、永井永光(ながい ひさみつ)さんが義父である永井荷風に関するエッセイ『父荷風』を上梓された。ある偶然で知遇を得たのであるが、永光さんが荷風の養子で著作権継承者であるということ知ったのはその後しばらくたってからであった。

それを切っ掛けに荷風の遺した作品に親しむようになり、日記文学としての最高峰と謂われている『断腸亭日乗』のなかで荷風独特の素っ気ない記述の内容に関してお尋ねしたいことが多々あったのであるが、なまじお付き合いが長くなり大先輩という遠慮もあってかご本人を目の前にするとなかなか伺うことが出来ないでいた。

この『父荷風』では、文学者荷風というよりは人間荷風を知る意味で非常に興味深い内容が綴られている。永光さんは、荷風と永光さんの実父であり荷風の従兄弟にあたる大島一雄氏(杵屋五叟)との間の「大人の都合」で養子縁組されたわけだが、荷風とはお互いに所謂「親子」としての交わりや生活はなかった。実父が文豪として大いに尊敬していた荷風を、永光さんが当時の子供の目で見た「へんなおじさん」振りがよく描写されている。

戦中戦後にかけて永光さん一家が戦災で偏奇館焼亡後の荷風と同居していた際(これも、荷風は養父というよりは単なる同居人)の、生活者としての文豪のかなり奇矯且つ我が儘で子供じみた振る舞いで笑いをさそう逸話が記述されている。しかし、当時の永光さん一家にとっては、荷風との同居生活はそんな生やさしいものではなく「苦痛」以外何者でもなかったようであるが。

昨日、サインを頂くために永光さんにお目に掛かったのだが、現在でもこの本に書くことが憚れる逸話も多々あったようで、その一部を伺い非常に楽しい一時を過ごすことができた。偶然、出版に携わられた白水社の和気元先輩ともお目に掛かることもでき、重版が決定したことを伺った。実現するかどうかは解らないが、永光さんの実父が遺された日記『五叟遺文』の再出版もそれとなくお願いしてみた。『断腸亭日乗』と対比して読むと非常に面白いような気がする。

この「父荷風」は荷風本人のことはもとより、戦中戦後の世相や「普通の人々」の苦難に満ちた暮らしぶりを窺い知る意味でも貴重な資料であることは間違いない。

昨年、市川市が市制70周年事業の一つとして『荷風が生きた市川』を開催するにあたって、市川市長と永光さんの「大黒屋」での対談のヴィデオを見ることができる。



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Comments

TBありがとうございました。
荷風については、いろいろなアプローチが出来て面白いですね。
しかし当事者としては、荷風の存在自体が「苦痛」だったといのは、わかるような気がします・・・

Posted by: MARU | June 18, 2005 09:44 PM

TBありがとうございます。
作家 永井荷風は以前から興味はあるのですが、実はまだ作品を読んだことがありません。むしろ、生き方に惹かれるものがあり、アリゾナキッチンにも行ってきました。
紹介されているエッセイ『父荷風』は面白そうですね。早速、本屋で探してきます。

Posted by: あ~る | June 18, 2005 10:44 PM

TBありがとうございます。
文学は奥が深く読み始めると止まらなくなります。荷風、じっくりと読んでみたいと思います。

Posted by: 勿忘草 | June 19, 2005 01:05 AM

荷風の作品は「夢の女」と「日和下駄」しか読んでいないのですが、「夢の女」を読んで 美しい文に感激しました。
他のものとあわせて、「父荷風」も読んでみようと思います。

Posted by: 魚政 | June 19, 2005 11:22 AM

初めまして。TBありがとうございます。
先日新聞広告にて『父荷風』の出版を知り、読んでみたいと思っていたところでした。
荷風の振る舞いが奇矯だったというのには、興味深いと同時に、やっぱり・・・という感じもします。

Posted by: 麻波郎 | June 19, 2005 01:47 PM

TBありがとうございました。相互TBにさせていただきました。
永井荷風と洲崎パラダイスの関係は、荷風の書いたものに「電車を乗り継いでやっとたどりついた」という趣旨の記述があるので縁はあったようですね。
さらに、玉の井と荷風は有名ですが、鳩の街にも当然通っていたんでしょうか?

Posted by: 合理的な愚か者 | June 19, 2005 04:39 PM

トラックバックありがとうございました。知らなかったのでとても助かりました。さっそく読んでみます。興味津々。

Posted by: 余丁町散人 | June 19, 2005 05:25 PM

TBありがとうございました。「断腸亭日乗」は昨年読み、非常に感銘を受けました。最後、文章が短くなっていきながらも記録を続けていく、作家魂というか気迫を感じる作品でした。
風変わりな人であることは、本人の文章からも明らかであるものの、客観的にどうだったか、興味があったのでこの「父荷風」はぜひ読んでみたいと思いました。

Posted by: yuyu | June 19, 2005 09:14 PM

TB
ありがとうございました。

永井荷風さんについては、その作品だけでなく、存在そのものにも惹かれるものがあり、今回改めて、その生涯をなぞってみましたが、調べれば調べるほど、分からなくなる方でした^^

改めて、「断腸亭日乗」を読み直しています。
文章に引っ掛かりが無いスラッと読めるところが、また、一筋縄ではいかないお人柄を表しているようで、非常に面白かったです。

「父荷風」とても興味を引かれます。
探してみます。

Posted by: KURONEKO | June 21, 2005 01:04 AM

TB ありがとうございます。
荷風についての知識が広がることが大きな楽しみです。私はまだブログを始めたばかりですが、いろいろと今後とも教えてください。
ありがとうございました。

Posted by: yuuzabu | June 22, 2005 10:15 PM

こんばんは。
以前、TBしていただいた者です。

永井荷風は比較的最近読むようになったのですが、そ
の生活と作品とが分かち難く結びついているような印象
を持ちます。きっと生き方そのものが小説家だったと思
うので、とても興味のある本です。読んでみます。

Posted by: lysander | July 06, 2005 01:26 AM

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