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April 05, 2005

After the constant struggle @ Teatro alla Scala

scalaイタリアの指揮者リッカルド・ムーティは1986年から20年の長きに亘って務めてきたミラノ・スカラ座の音楽総監督を辞任した。クラシック音楽界、特にオペラの世界ではありがちなニュースであるが、今回もその典型的な一つの事件であったようだ。

ムーティとラ・スカラ側との不協和音は以前から漏れ聞こえていた。メディアの伝えるところによれば、彼が取り上げるポピュラリティの低いオペラに対し異議を唱えていた前総裁のカルロ・フォンターナの解任が引き金となり、この前総裁に与する劇場の労働組合のストや音楽総監督解任決議が出されるにいたって、ムーティは辞任を決意した模様。

「南」のナポリ出身の現在63歳のマエストロは若手と呼ばれていた頃からその強面の風貌も手伝ってか、「ヲレサマ」ぶりはつとに有名であった。先人トスカニーニ達の巨匠の時代なら指揮者としてはごく普通な資質であったが、ムーティはこの現代においては珍しい独裁的な指揮者であるといえよう。政治とは違い、芸術はデモクラシィが必ずしも信奉される世界ではない。民主的手続によってその芸術が質的に高められる保証などどこにもないからである。

イタリア音楽界の南北対立にも模せられた、「北」はミラノの名門音楽家一族出身のクラウディオ・アバードとのライヴァル関係も、ムーティがアバードのラ・スカラ音楽総監督辞任後その地位を襲ったことで一段落付いた格好になったのだが、それから20年を経た現在その経緯は別にして彼もその地位を追われるという結果となった。もし、後任としてリッカルド・シャイーにでも白羽の矢が立てば、正に「因果は巡る風車」。(アバードはシャイーの師匠にあたる)

ムーティは一般的に信じられているようなナポリタンの特徴といわれる明るく、いい加減かつノーテンキな気質は全くといって持ち合わせていないようで、私生活も殆ど公に晒すこともなくごく親しい友人としか付き合いを持たない人だそうである。しかし、これほど笑顔が似合わない音楽家も現代では珍しい。(ストライプのダブルブレスト・スーツなんぞに身を包み、あの顔で笑われた日には、そのあとには何か良からぬことが起こるのでは?と、つい想像してしまう・・・)

確かにここ何年かのラ・スカラのシーズンのオープニングでこのマエストロが取り上げた演目はワタシならずとも「!?」という感がありありで、イタリア・オペラ殿堂での一番の「ハレ」の舞台には如何なモノかという気もしていたし、ファースト・ネイムの”リッカルド”は”リヒャルト”と呼んだ方が相応しい、などど下らぬことを思ったりもしていた。

音楽家、指揮者として全く問題にすべきではない彼の資質について書き連ねてきたのだが、そのカリスマ性の所以からかイタリア・オペラにおいては彼は多数の信奉者をイタリアはもとより全世界に持っている。ただ、ワタシとこのマエストロの創る音楽とは非常に相性が悪いようで、巷間言われているような「イタリア・オペラの現代の巨匠」という評価には簡単に首肯できないものを感じていたのも事実である。

確かに彼の音楽には強烈なカンタービレや「歌」、緊張と弛緩など、イタリア・オペラに必要不可欠な要素に満ちていることを認めるに吝かではない。だが、しかし、彼の音楽の「呼吸」とワタシの期待するモノが合致しない。正に「息」が合わないので、彼のオペラを聴くと(特にこちらが慣れ親しんだ演目の場合)非常に疲れてしまう。恐らく、ムーティという人は原典に対して非常に厳格な人だというから、間違いなく彼の音楽創りの方がが正しいのであろうが、当方としては今更それにすり寄るつもりもサラサラにない。

ラ・スカラのシェフを辞任したところで、このマエストロは世界中で引く手あまたであろうから、いずれそれなりのポジションに就くことは間違いと思うが、それがオペラ・ハウスなのかオーケストラなのかは注目に値する。

尚、Pro Mutiな方、今回の辞任に至る経緯を詳しく知りたい方は、こちらのサイト(南イタリアの申し子~リッカルド・ムーティ)をご覧になることをお勧めする。



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Comments

TBありがとうございました。
リッカルド・ムーティの一件は、もめた相手が楽員たちというちょっと違った相手だったのがカラヤンとBPOを思い浮かべたりしていました。
彼の演奏が好きとは限らないのですが、風貌からのコメントはなかなか面白かったです。民主的な運営が良い音楽の保証とはならないのは当然でしょうね。
これからもどうぞよろしくお願いします。

Posted by: Schweizer_Musik | April 05, 2005 at 05:04 PM

Schweizer_Musikさま、

TBとコメント、ありがとうございます。

ムーティの音楽への好き嫌いは別にして、現代ではいわゆる巨匠の時代には起こらなかったであろう辞任劇がありますね。

ゲージツ家に求めるのも酷な気もしますが、音楽界でも音楽以外のコミュニケーション能力が求められる時代になったということだと思います。オペラやオーケストラの場合、最終的にその音楽を決めるのは指揮者であるのは間違いのないところなので、メンバーに対し如何にして「やらされた!」という感情を持たせないかということがキーかな?と思います。

Posted by: Flamand | April 05, 2005 at 05:43 PM

Grazie per il TB.
La Scara で統率のとれたオペラを楽しんで観ている分には、ムーティは最高だったんですがね。
プログラム面を見てもアグレッシブで(客として)個人的には満足していました。
劇場も改装したばかりですし、もう少し振って欲しかったと思いますが・・・、シオドキだったのかもしれませんね。

Posted by: まーどんな | April 06, 2005 at 10:00 AM

初めまして。
新聞のリンクをはっただけの私の拙いブログへ、TBをありがとうございました。

電撃的辞任のようでいて、実は前々からいくつか対立があったのですね。どうも新聞だけですとよく分かりません…。

後任をめぐっても、またいくつもゴタゴタがありそうですね。アッと言わせるような人事なのか、大変見物です。

ムーティの音楽面に関しては、Flamandさんのご意見に同感です。ちょっと息苦しさを感じてしまいます。(指揮姿はとても颯爽なのですが…。)

Posted by: はろるど | April 06, 2005 at 11:24 PM

>ストライプのダブルブレスト・スーツなんぞに身を包み、あの顔で笑われた日には、

ゴッドファーザーのテーマ流れてきますね。
グッドフェローズの方がより品がなくてよいでしょうか。

個人的にムーティの音楽は嫌いではないんですが、
指揮中に前髪がぐわんぐわん言うのがちょっと。
頭頂部でキュッと、ゴムかなんかで束ねていただきたい。

Posted by: porcius | April 11, 2005 at 07:02 PM

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