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March 12, 2005

Capitalism on the land value


前のエントリ”Take me out to the snowland ~ epilogue”で近江出身の堤康次郎氏が所謂”近江商人”であったかどうかに疑問を感じたので、若干調べてみた。

先にのエントリで述べた「三方よし」の他に、近江商人を特徴付ける言葉がいくつかある。代表的なものとして、「近江の千両天秤」「鋸商法(諸国産物廻し)」などがあげられる。「近江の千両天秤」とは天秤棒一本の行商で財を成す、あるいは財を成したあとも天秤棒を担ぐ行商の初心を忘れるべからずという意味であり、「鋸商法」とは地元や上方の商品を他国で商うだけではなく、その土地の産物を持ち帰って再び商うという往復商法のことを言う。

江戸時代には、三都(江戸、大坂、京都)に店を構える豪商を輩出した近江商人の基本理念はこれらの言葉によく表されている。かつて堺屋太一氏は「日本の資本主義は近江商人から始まった」と述べておられたようだが、その商いは商業資本を基盤としたものであった。翻って、堤康次郎氏の場合は「土地」を基盤としたビジネスに終始し、所謂近江商法とはかなり趣を異にするといえよう。巷間、彼は西武鉄道の創業者として認識されているが、そのビジネスのルーツは軽井沢に隣接した沓掛(現在の中軽井沢)の別荘地販売であり、その際に設立したのが千ヶ滝遊園地(株)であった。この会社を清算後に起こした会社が箱根土地(株)であり、これがそのまま現コクドに繋がっている。現在軽井沢や箱根が西武の金城湯池といわれる礎を築いたわけであり、鉄道経営は寧ろこれらの土地活用の手段として用いられたといえる。

堤康次郎氏の土地への執着の凄まじさはこれまで出版された幾つかの著作物でも紹介されており、これが2代目義明氏の時代の土地バブルに乗じて彼をして当時の世界一の億万長者に押し上げたワケである。このコクド・西武グループは資本主義というよりは”地本主義”とも言うべきビジネス・モデルの権化のような存在であった。しかし、バブル崩壊と伴に”地本主義”は金本位(The gold standard)のように、”土地本位制(The land value standard)”とは成得なかったわけである。

この地本主義に狂奔した企業が次々と崩壊していく中で、最後の大物というべき企業がこの西武グループであった。何も対策を取らなければ、どんなに蓄財しても3代目では只の人になるという”経済社会主義”ともいえる我が国で、これまで堤家(義明氏)が財力を以て各界で権勢を振るえたのも康次郎氏の「遺訓」をひたすらに墨守し、絶対君主制ともいえるマネジメント・スタイルを貫いた義明氏の所業の所以であろう。

この義明氏、恐らく明治維新後の新興成金が勃興した時代であれば、世間から嫌われたであろうが、獄に繋がれるようなことはあり得なかったし、2代目としては寧ろ才能ある経営者として評価されたかもしれない。今回の逮捕は時代の価値観との埋めがたい乖離が招いた結果ともいえる。彼の辞書には”コンプライアンス”などという言葉は存在しなかったのであろう。

メディアが持つ本質的な体質と言ってしまえばそれまでであるが、今回の堤義明氏の逮捕に関連する報道は「何を今更?」といった感を持たざるを得ない。その内容の殆どが、西武グループと関わりを持った人々には既知の事実であり、まるで鬼の首でもとったように囃し立てる様子は嫌悪感すら覚える。

現在でも我々の周りには、ミニ堤・ミニ西武はいくらでも存在していることも事実である。

件の義明氏に同情するつもりはさらさら無いが、検察の取り調べでは義明氏本人も自ら法律に違反した事実は認めていたようであり、逮捕そのものの妥当性にすら些かの疑義を感じざるを得ない。一罰百戒という意味を込めた当局の判断であろうが、在宅起訴でも公判は維持できるのではないだろうか?

今回の事件がらみで2人の自殺者が出たが、その理由が果たして絶対君主への忠義立てだけだったのであろうか?どのような取り調べが行われたのかは、現時点では全く闇の中である。





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