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October 07, 2004

Ikspiari

度々お邪魔させていただいているblog”フランスって”において、”元気のないパリのディズニーランド ”というエントリでパリ・ディズニーの現状を紹介しておられる。タイトルに示されているように、ユーロ・ディズニーで開業後の業績不振のためパリ・ディズニーとしてリニューアルを図ったが相変わらず芳しくないらしい。

”フランスって”のエントリでも述べておられるように、そもそも殆どのディズニー・キャラクタのオリジナルのいわば”本拠地”のヨーロッパ、しかもアメリカ文化に対してはアンビヴァレントな風潮がとりわけ強いフランスという場所を選んだこと自体に大いに疑問がある。

どのビジネスにおいても言えるいことであるが、継続的な成長のための最も重要なポイントの一つが「固定客」を掴むことである。これをディズニーランドようなテーマパークなどの場合当て嵌めると、いかに数多くの「リピータ」を獲得できるか?ということである。

事実、日本においてはTDR(東京ディズニー・リゾート)が一人勝ちで、他のテーマ・パークの殆どが凹んでいるのが現状であるが、開園当初はどこでもそこそこの集客はできていた。TDRの突出した業績はその後の”リピータ”を掴んだ結果である。

どうすれば一見のお客さんを”リピータ”という固定客にすることができるのか?誰でも容易に思い付くことは、イヴェントやテーマの定期的なリニューアルであろう。TDRはそのCore Valueを維持しながらも、”リピータ”を倦きさせないための施設のリニューアルや新設(ディズニー・シーなど)を巧みに行っているし、ホテルなどの付帯施設の充実も図っている。また、97.5%が日本国内から来園者ということと米ウォルト・ディズニーが全く出資していないオリエンタル・ランドによる経営のためか、アナハイムやオーランドとは異なるローカル・ニーズにも対応している。

元気のないパリのディズニーランド ”にコメントさせて頂いたように、”人混み”が苦手なため実際にTDRには行ったことはないのだが、”ディズニー・フリーク”の知人数名(TDR入園者の70%は大人)から聞いたところではTDRを度々訪れるのには別の理由もあることが分かった。

それは、TDRのスタッフの来園者への対応の”質”が他のテーマ・パークに比べ格段に高いそうである。時間と費用を使ってわざわざTDRに足を運ぶ来園者は非日常的な”夢の世界”の体験を期待しており、その主目的たる乗り物・イヴェントや設備の充実も重要ではあるが、それを支えるスタッフの顧客対応も無視できるものではないことも間違いない。

マーケティングの世界ではよく「顧客はモノやサービスを通じて経験を買う」と言われているが、TDRはこの顧客体験を重視しており、そのためのスタッフの教育には非常に力を入れている。園内の全てのスタッフに対し顧客の前では舞台上の演技者と同じような心構えが要求され、TDR内でいかに良い体験・印象を持ってもらうかに腐心している。

家族連れが記念写真を撮っていることに気付いたスタッフは積極的にそれを手伝ったり、客が落としたゴミを掃除する場合はそれが嫌味にならない程度の「間」をおくことが指示されていると言われている。

TDRの最寄り駅である「舞浜」に「ディズニーランド」の名称を付けたいというJRの申し入れに対し、「自らそのオペレーションに係わることができない施設(駅)に名前を使われては困る」と断ったという、真偽のほどは定かではない逸話を聞いたことがある。

本エントリのタイトル”Ikspiari”はTDR内のシネマコンプレックやレストランなどがあるショッピングタウンの名称であるが、英語の”Experience”とペルシア神話の妖精”Peri”の2つの言葉からの造語だそうで、TDRの姿勢を端的に表した言葉であろう。

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Comments

TDL(当時)の研修は非常に質が高いとで読んで、とある巨大スポーツ大会のボランティアの研修について提携を夢想したことがあったんですが、先方の方が権利ビジネスの世界で遙かに優位に立っているので、ただではできないと言うことを悟り、早々にあきらめました。でも、一回くらいはミーティングしたんだったかな。とにかく昔の話です。

Posted by: ガーター亭亭主 | October 07, 2004 at 05:42 AM

>先方の方が権利ビジネスの世界で遙かに優位に立っているので

ハイ、ある意味では日本一といわれる会社の方がOLCの新入社員教育を見学させてもらうだけでも、大変だったと聞いております。

Posted by: Flamand | October 07, 2004 at 03:11 PM

TDLは日本からの客の率がそんなに高いんですね。そうすると「日本人好み」にすればいいという意味では目標はクリアでやりやすいかもしれません。パリのディズニーは確か半分近くがフランス以外のお客と聞いています。でも、リピーターはどうしてもフランスのお客を中心にせざるを得ないでしょうし・・・。他人の会社ながら「やっぱり大変だなー」と思います。
研修もアメリカ式にいろいろ厳しいのですが、ここはフランス、「ひげは禁止」などということは「個人の自由を侵すものだ」などと文句がついたりしてました。
やはりフランスは経営者にとってはうまみのない国ですね。

Posted by: ふらんす | October 07, 2004 at 04:43 PM

ふらんすさま、

コメントありがとうございます。

>やはりフランスは経営者にとってはうまみのない国ですね。

以前、アメリカ人で異文化コミュニケーションの女性コンサルタントがフランスのことをビジネスの視点で書いた本を読んだことがありますが、いわゆるアメリカ的ビジネス・マネジメントそのままではフランスでは難しいようですね。

時間の概念の違いなど真面目に論考してるのですが、文中で紹介されている逸話(実話)が抜群に面白かった記憶があります。

覚えているのは、”照明”に対する感覚がアメリカ人とは全く違うということです。パリの米系銀行のアメリカ人マネージャが昼休み後に招集したミーティング・ルームに行ったところ、照明がついていないので、未だスタッフは集まっていないと思い点灯したところ、殆どのフランス人スタッフは既に”暗がりの中”に着席していた。そして、遅れて来たフランス人スタッフは部屋に入ると同時にその照明を消した。この類のエピソード満載の本でした。

Posted by: Flamand | October 07, 2004 at 06:38 PM

東京ディズニーランド(別称:ネズミーランド)ですが、私もTDLが出来た当時は行ったものの、肌に合わずそれ以来全く足を踏み入れていません。家族も「行きたい」とはゼッタイに言わない。

日本においてのみ(中国にも進出していたよな)なぜディズニーランドが受容されたのか、確かにオペレーションの上手さは開園当時から指摘されていましたが、私にはそれ以外の文化受容に関わる理由があるような気がしているのですが、それが何だか分かりません。

Posted by: yukihiro | October 07, 2004 at 10:14 PM

yukihiroさん、

ユーラシア大陸のドン詰まりに位置しているためか、日本には古代から「外来崇拝」の伝統あります。そのままで受け容れがたいモノは「いいとこ取り」「換骨奪胎」という手法で取り込んできました。

そいう意味でディズニーランドが受け容れられたことには何の不思議も感じません。

ブランド物も然りで、かのLouis Vuittonなどは、欧米ではそれなりのクラスの人でないと買い求めませんが我が国では見事に大衆化しています。(Louis Vuittonの売り上げに占める日本人のシェアは、国内販売に海外での購入を含めると40%を遙かに上回っていることは確実です)

あるスイスのJewelerのマネージャが、日本のようにRolexをローンで買う顧客など彼の地では皆無だと言ってました。

Posted by: Flamand | October 08, 2004 at 03:56 PM

こんばんは。いや、分からないのはまさにそこなんですよ。

>日本には古代から「外来崇拝」の伝統あります

「極東」でも「どんづまり」でも「島国」でも良いのですが、何故に自らの文化を変容させてまで(あるいは外来を貪欲に吸収しながら)の外来礼賛なのか。国民性と言ってしまえばオワリなんですがね。

ブランド礼賛と外来崇拝は根は同じながら、ごく微妙に消費者心理は違うようにも思えます。別に深く考えているわけではありませんが。

TDLに戻ると、ディズニー・ランドとディズニー・シーでは人気はいまだランドの方に軍配が上がるらしいですね。シーは行ってみたい気も少しはするのですが・・・

Posted by: yukihiro | October 08, 2004 at 09:29 PM

フラマン様

 その本って、これだったでしょうか。。。

Posted by: ガーター亭亭主 | October 11, 2004 at 12:57 AM

ワタシはTBSブリタニカから出版されていたように記憶してましたが、確かにご指摘の本です。笑いながら読んだ気がします。

Posted by: Flamand | October 11, 2004 at 01:13 AM

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