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August 29, 2004

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この矛盾した数式擬きは大型ハイテク企業が合併した際の公理となっているようである。

We all follow United !のサイトで ”Stuck in the Middle-フォーカスを失ったHP ”のエントリで現在のHP(Hewlett Packard, HPQ)が直面する問題を取り上げておられる。

参照されたEconomistの”Losing the HP way”の中でも述べられているとおり、2002年にHPはCompaqを吸収合併したわけだが、2003年のRevenueは合併以前の両社のものを足し加えた金額に比べると遙かにBehindしている。未だかつて成功したことがないハイテク企業の大型合併に果敢にチャレンジしたHPであるが、数字の上でもその成果は未だ現れてはいない。

HPはCompaqと合併する以前から競合他社と比較して遙かにブロード・レンジな製品・サービスを提供していた。当時、Revenueで大きく上回っていたIBMよりも余程幅広い製品・サービス群を有していた。勿論これはTest & Measurementで膨大な製品を持つAgilentをスピン・オフした後の状況である。

Carly FiorinaはHPのCEO就任後、「HPとは100の中小企業が寄り集まったような会社だ。各プロダクトにフォーカスするあまりHPというブランドが生かされていない」と語っていた。これは確かに一面では的を射た見解ではあった。当時のHPはプロダクト・ラインを統括するビジネス・ユニットが大きな力を持っており、開発から販売までをコントロールする強固な縦割の組織を社内に林立させていた。他方、時には社内競合をも起こしかねないこの組織形態がHPのモメンタムの大きな原動力となっていたことも事実である。組織の分散と統合は潮の満ち引きのように繰り返すものであるが、当時のHPは分散の極にあったともいえる。

Fiorinaは80以上存在していたこの組織を15までに整理統合し、マーケットに対しては製品・サービスよりもHPブランドをアピールするメッセージを発していた。但し、製品・サービスそのものの削減には殆ど手を付けなかった。Compaqとの合併後も明らかに重複する製品・サービスの統廃合は行ったが、その製品レンジを狭めることは行わずに今日に至っている。

Fiorinaという人は公の場でのスピーチの内容でも解るとおり、HPの将来に関してはとてつもないBig Pictureを構想しており(Compaq買収もそのコンテクストの延長線上にある)、それを実現するためには他に類をみないブロードな製品・サービス群が必須と考えているようである。

而してHPの現状を見ると、プリンタを除くセグメントにおいてそれぞれの強力なコンペチタとの厳しい競合に晒されており、プロフィットには貢献しておらずマーケットからは適切な”選択と集中”が行われていないと見なされている。

HPは数年前からコンサルティング・サービスを将来の収益源とするべく力を注いできたが、PWCの買収に失敗(後にIBMが買収)したことが象徴するように思惑通りの実績が上がっていない。プロフィットという側面からは未だ”インク・カートリッジの会社”(プリンタ自体は殆どプロフィットを生み出さず、インク・カートリッジを販売する為の”箱”という位置づけ)からは脱却できていない。

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Comments

極め付きの充実サイト楽しませて頂いております。
フランスでは、M.Thevenet、E.Delavalleeの著作刊行来、M&Aの非効率性を「企業文化culture d'entreprise」の違いで説明するのがちょっとした流行の観もあり(日本でもそうかも知れません)、大体、M&Aは市場への媚、経営者の虚栄心で、社員にはストレスのみといった趣旨。HPのケースについても、両社の企業文化が齟齬をきたしたとか、FiorinaはCompaqが元々持っていた収益性第一、トップダウン型マネージメントの文化を継承し、人材尊重、チームワーク、コンセンサス型マネージメントの「HP Way」を破壊したといった類の論評を見た覚えがあります。店主さん、We all...さん、Economist誌は、セグメントの組織効率といった「要素論的」説明に特化し、取り合えずその辺の観点には言及されていないと思いますが、それは、1)タマタマなのか、2)アメリカでは、そうした議論はやはり最前面には出ないのか(企業文化の考え方自体はナレッジマネージメントとか、High performance culture factors とか英米起源らしいですけど)、3)IT企業では、他業種に比して、社員の抽象性、互換性が比較的高いのか、4)「文化的」理由で英米型経営に反発があるフランスの特殊事情か、などと想像したのですが如何でしょうか。
序でに4)に関連した話題では、仏電力公社の女性幹部が書いた「Bonjour paresse 仕事をうまくサボル法」が3万部を売ったとかで評判になっています。FT紙も取り上げたとか。「業績主義はアホクサ・マネージメントjargonを操るエリート校出身者にしか適用されない」みたいな企業断罪が書かれていて、面白がられてるみたいです。彼女は近日中にクビらしいですが。

Posted by: Gerhard | September 02, 2004 at 01:25 PM

Gerhardさま、

コメントありがとうございます。かつてのHPはHP Wayに象徴される、米国の企業としてはかなり特異なカルチャを有する会社でした。(逆に日本人には納得できるところが多いカルチャですが)

Fiorinaという人はHPが創業以来初めての外部からのCEOです。その報酬を含め、当時のHPにとっては驚天動地に値するCEOでした。近頃『創造的破壊』(シュームペータ)などとよく言われますが、企業のトップといえども『創造』と『破壊』の双方を上手く成し遂げる人は滅多にいないません。その意味では日産のカルロス・ゴーンやIBMのガスナーは希有な存在といえます。(個人的には我が国の小泉首相は中途半端な破壊者で創造能力はゼロに近いと評価しています。)

彼女は取りあえず『破壊』はほぼやり遂げましたが、『創造』の方はその発言通りには実績を上げてはいないと市場からは評価されているようです。

このCarly Fiorinaという人は非常にユニークかつ興味深いビジネスパースンなので、資料が整理できたら別エントリで彼女のことを取り上げてみたいと思います。

Posted by: Flamand | September 02, 2004 at 03:09 PM

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