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July 11, 2004

Voice of Sensualism

Ljuba.jpg

昨日のことなのでパスしようかとも考えたが、7月10日は第二次大戦直後にセンセーションを起こしたStraussian Sopranoであるリューバ・ヴェリッチ(Ljuba Welitsch、本名はWelitschkova)の誕生日であった。

彼女はブルガリアのBorissowoに生まれ、ソフィアで声楽を学び1930年代の修業時代には当地で『ファウスト』のマルグレーテやルチアを歌っていた。その後1937年にはグラーツの歌劇場と契約し、マダム・バタフライ、ムゼッタ、『薔薇の騎士』のゾフィー、『カヴァレリア・ルスティカーナ』のネッダなどをレパートリとしていた。その後、ドレスデン、ミュンヒェン、そしてヴィーンの舞台に登場した。ヴィーンでも最初はシュターツオパーではなくフォルクスオパーでミミや『売られた花嫁』のマレンカなどを歌っていた。

1944年ついにシュターツ・オパーでシュトラウス自らの指導を受け、その後の彼女のシグネチャ・ロールとなるサロメを歌った。この作曲家の薫陶は彼女の生涯の誇りとなったようである。事実、チェボターリと並んで後年の作曲家の理想とするサロメの一人として彼女の名を挙げていた。ヴィーンではその後デズデモーナを、ザルツブルクではカラヤン指揮の下でドンナ・アンナなどのレパートリを加えていった。

1947年9月のヴィーン・シュターツオパーのロンドンでの引っ越し公演でドンナ・アンナとサロメを歌ってインターナショナル・デビューを果たした。クレメンス・クラウスが指揮するオーケストラの上を浮遊する彼女のユニークなサロメの歌声はロンドンの聴衆に大きな衝撃を与えた。

Welitsch_Salome1.jpg

その後数シーズン、彼女はコヴェント・ガーデンでドンナ・アンナ、アイーダ、『スペードの女王』のリーザ、ムゼッタ、そして悪名高き?ピーター・ブルックの演出でサルヴァドール・ダリが舞台美術と衣装を担当したサロメにも出演した。

彼女のキャリアのハイライトとも言うべきは、ライナーと共にMETデビューとなったサロメである。これはMET上演史上の”大事件”の一つとしてその後長く語り伝えられた。METにおいてもアイーダ、ドンナ・アンナ、アイーダなどを歌うが、50年代半ばを迎える前に彼女は急激にその声を失っていった。彼女は1955年頃からは、オペレッタのセカンド・ロールをヴィーンのフォルクスオパーを中心に1981年に引退するまで歌い続け、1996年9月1日にヴィーンで亡くなった。

ヴェリッチは全盛期が非常に短い歌い手であったが、細かいヴィブラートを伴い少々鼻にかかった声は独特の浮遊感を持っており、時に少女を感じさせる危うい色香を漂わせていた。コヴェント・ガーデンで舞台上でのスキャンダラスな振る舞いが一部の観客から非難を浴びた彼女のムゼッタは、残された録音を聴いても鼻っ柱が強く蓮っ葉なこの役の性格を間然する所なく表現されている。ただ、不思議なことに彼女がトスカやドンナ・アンナを歌うと寧ろ女性のひたむきで一本気な性格が強調されてくる。彼女の女優としての優れた演技力と、写真でも分かるように、そのヴァンピィな容貌がサロメの舞台で一大センセーションを巻き起こす大きな力となったことは間違いない。

Welitsch_Lainer1.jpg

彼女の全盛期のプリマドンナとしての気位の高さは相当なものだったらしく、劇場マネジメントとの小競り合いも少なくなかったようである。それにしてもこの写真のライナーの異様な視線とそれを全く無視するようなヴェリッチの眼差し、まるで『サンセット大通り』のグロリア・スワンソンとエーリッヒ・フォン・シュトロハイムを想わせる恐ろしげな構図である。余談になるが、彼女は1956年に14歳下のヴィーンの交通警官と結婚したが、1969年に離婚している。


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