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June 28, 2004

The company which does not seek the profit

資本主義の世界で、NPOでない限り株主から出資を受けた企業は利益を追求するのが当たり前のことである。日本の企業では少ないと思うが、米国ではこの当たり前のことをCompany Objectiveに明記している企業もある。

この営利企業の本来の性質ともいえる、利益を追求することを放棄した企業がある。既に、TVやメディアでも取り上げられたことがある広島を本拠地とするメガネ販売チェーン「(株)メガネ21(ツゥーワン)」というユニークな経営理念を持つ会社を同社のサイトの情報から見てみた。

昨今「顧客第一主義」を唱える企業が多いが、この会社は「21は社員の幸福を大切にします。 社員は皆様の信頼を大切にします。」という社是を掲げている。即ち、社員第一、顧客第二主義という意味である。不幸な社員が、顧客を幸せにできるワケがないというのがその言い分で、顧客第一主義を唱えながら実は会社第一主義という本音を持つ企業が顧客を蔑ろにしていることを暗に批判しているようにも感じられる。

さらにこの会社の経営方針は「会社に利益を残さず、お客様に還元する。」となっている。先に述べた利益を追求しないという言い方は不正確で、実際には会社の残すべき利益を顧客に対しては商品の値下げで、社員に対しては報酬で還元してしまおうということである。社長の年収にも上限(1,231万円:配偶者特別控除が受けられる上限)を設けており、その任期も4年としている。

サイト上に質疑応答の形式で公開されている、「21(ツゥーワン)の人事破壊」として紹介されている中で興味をもったのは、


* 一般社員には人事評価はしない。組織内に無用な摩擦を生むとして、成果主義も採用していない。基本給は30歳で昇給はストップ。(眼鏡士の能力は30歳で完成されるので、これを昇給限度としている)

* 職種を一般職、独立・転勤、共同出資、跡継ぎ(眼鏡店の)のコースと分けており、社員の価値観やライフスタイルによってそれを選択できる。

* 昇給が停止する30歳以降により高収入を望む社員に対しては、それまでに貯蓄をし独立するか、経営陣に加わり成果配分を受ける。というモデルを提示している。

* 個人・店舗ごとの売上目標も設定していない。売上ノルマの設定による顧客より上司の要望を優先するという弊害を避けるため。

* 会社は法人だから社員の幸福は考えない。社員の幸福は社員自ら考える。

* 会社のために働く社員は皆無で、社長を筆頭に全社員個人のために働いている。

などなど、興味のある方はこの会社のサイトの質問と回答のページを参照されると良い。

これらのユニークとも思える経営方針は、この会社を創業した経営陣が、同業他社での社内抗争で解雇されたという苦い経験が土台になっているようである。株式会社というよりは、共同組合といった色彩が色濃く出た企業である。

一見、これから先の日本企業が目指す方向性と逆行しているような経営理念を掲げているが、社員一人一人の自己責任を積み上げて成立している企業ともいえる。

これを、常識はずれで無謀、地に足が着いたユニークなやり方等々、人それぞれの見解はあると思うが、ふと思い出したのがピーター・ドラッカーが『明日を支配するもの』の巻頭で日本の読者にあてた以下の言葉である。


世界には、もうこれ以上の均質さはいらない。必要なのは多様なモデル、多様な成功、多様な価値観である。


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Comments

トラックバックありがとうございます。
利益が一番のプライオリティでない企業というのは、おそらく家族でやっているような小さな企業には珍しくはないと思います。株式会社という組織は資本提供者が(株式の取引により)入れ替われるというのが原則になっていますので、企業が大きくなっていき、そこに多くの投資家が入ってくる場合には、共通の価値としての利益が一番のプライオリティになってくる傾向にある、ということになるのでしょうか。

要は投資家が納得すればいいわけで、引用された「(株)メガネ21(ツゥーワン)」の経営方針も、投資家がそれと知って投資しているならばいいと思います。こういう企業、なかなかかっこいいですよね。私は、これが「これから先の日本企業が目指す方向性と逆行しているような経営理念」だとはまったく思いません。そもそもすべての日本企業が1つの方向性をめざすべきという方向性こそが、「これから先の日本企業が目指す方向性と逆行している」と思います。むしろ多様性こそが必要なのです。

私がいいたいのは、すべからく企業は(あいまいな)社会的責任を、という主張を、しかも自分の社会的責任を棚に上げて唱えるのはおかしい、ということです。企業は、顧客やら投資家やらが社会的責任を果たす企業を望むならそのようにふるまいます。たとえばリストラした企業を許せないなら、その企業からは買わないようにすればいい。安いからといってリストラした企業からものを買いながら、リストラはいけないと主張するのはいかがなものでしょうか。この点に関する「市場メカニズム」の欠陥の多くは、市場そのものにではなく、市場に参加する私たちの心の中にあるのだと思います。

Posted by: 山口 浩 | July 12, 2004 at 09:30 AM

コメントありがとうございます。

>これから先の日本企業が目指す方向性と逆行しているような
>経営理念を掲げているが、

これは、最近の企業マネジメントに対する支配的な論調に対して少々皮肉を込めたつもりでした。その企業の持つ価値観や環境によってVision,Mission,Strategyが違うのは当然のことで、正解が一つなどということはあり得ず、正に仰っておられる通りです。

この会社は勤勉でごく普通の人間にとっては、本音との乖離を起こさない良く出来た仕組みを持っていると思います。会社を解散する際のCriteriaも明文化されており、確かに「かっこいい」ですね。

>この点に関する「市場メカニズム」の欠陥の多くは、市場そ
>のものにではなく、市場に参加する私たちの心の中にあるの
>だと思います。

世の中のモノとコトの繋がりを洞察して、自律した行動をする必要がありますね。


Posted by: Flamand | July 12, 2004 at 05:10 PM

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