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June 09, 2004

A good-looking soprano who died before her time

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1949年6月9日は、39歳という若さでで亡くなった美人ソプラノ、マリア・チェボターリの命日。

彼女は、ルーマニア出身ということになっているが実際にはモルダヴィア(現モルドヴァ)で1910年に生まれた。歌や演技など舞台上での才能は幼い頃から飛び抜けたものがあったらしく、10代でモスクワに出て(連れて行かれた?)女優として活躍していた。このときは、彼女を見いだした伯爵アレクサンダー・ヴィルボフと結婚していたらしい。

その後彼女は歌い手を目指し、パリ経由でベルリンで本格的な声楽の勉強を始める。当時いち早くチェボターリの才能を認めたフリッツ・ブッシュは彼女をドレスデンに招いた。ボエームのミミでデビューを飾ることになる。彼女は当時の新作オペラの上演にも貢献したが、そのハイライトはリヒャルト・シュトラウスをして理想のサロメ歌いを見いだしたと言わしめ、『無口な女(Die Schweigsame Frau )』の初演でアミンタを歌ったことであろう。

シュトラウスは初演当初はサロメを、イゾルデの声を持つ16歳のプリンセスを理想としていたが、その後はより軽い声をこの役に充てたかったようである。事実、あの代表的なリリック・ソプラノである、エリーザベト・シューマンに盛んにサロメを歌うように勧めており、彼が自ら指揮を執りオーケストラのヴォリュームを押さえることを保証する、とまで言って彼女を誘っていた。勿論、これはシューマンの固辞で実現することはなかったが。

その意味で、シュトラウスは晩年このチェボターリとリューバ・ヴェリッチ(Ljuba Welitch)を理想のサロメ歌いと考えていたようである。後年、このことを自慢気に語っていたヴェリッチのインタヴュを見た記憶がある。チェボターリの声質は確かに全盛期のヴェリッチに通じるところがあり、直向きで何かに強い憧れを求るているような声である。低域でも明るさをを失わず、劇場の後ろまでよく飛んでくるような典型的なスピントの声を持っていたと思われる。

チェボターリはリリックな役柄はもとより、レパートリをより重く強い声が必要な役柄へと拡げていった。1934年には24歳という若さにして宮廷歌手(Kammersängerin)という称号を与えられる。1935年からはベルリンのシュターツオパーに進出し、超ヘヴィー級なヴァグナーは除いてドイツ、イタリアに係わらず主要なソプラノの殆どのレパートリを歌ったといっても過言ではない。

チェボターリは流石にベルカント・オペラは歌わなかったが、そのレパートリの広さは後年の全盛期を迎える直前のマリア・カラスを彷彿とされるものがある。

彼女は録音という意味で不幸な時代と短命な生涯の割には、現在でも残された記録でその歌声を聴くことができる。『ラ・トラヴィアータ』の抜粋盤では、素晴らしいヴィオレッタを披露している。これは、40年代始めにベルリンで録音されたもので、30年代の彼女の録音に比べ飛躍的に充実した歌唱になっている。

リリック・ソプラノが歌うヴィオレッタの場合、高域は華麗に転がるが低域は力に欠けたスカスカという声に出会すのが普通である。しかし、彼女の場合は、どの音域もしっかり身の詰まった声を披露している。更に、彼女はヴィオレッタでは子音を極力強調せずに歌っており、ドイツ語の歌詞という違和感を出来るだけ感じさせないように心がけているところは立派である。

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その後、チェボターリはヨーロッパの主要なオペラ・ハウスに客演し活躍するが、1938年にはヴィルボフ伯爵と離婚し、ドイツの映画俳優であるGustav Diessl と再婚した。その容貌を買われてナチ時代の看板歌手として幾つかの映画にベニアミーノ・ジーリを相手役に出演した。(残念ながら見たことがない)

1947年にはヴィーンのシュターツ・オパーに移るが、その翌年再婚相手を失い、1948年には彼女も肝臓癌を患って亡くなった。経緯は不明だが、二人の遺児はピアニストであるサー・クリフォード・カーゾンに養子として引き取られてそうである。

嗚呼、美人薄命。

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