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May 12, 2004

The more things change, the more they stay the same ~ No.2

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かつて置き薬の売薬業は富山の専売特許というわけではなかったが、『越中富山の薬売り』といういわば全国ブランドを確立したのにはそれなりの理由がある。

確かに、富山には平安時代のころから、立山山岳信仰の布教活動の一環として芦峅寺あたりの修験者が全国に薬を売り歩いていたという下地はあったようではある。しかし、富山の売薬業は自然発生的に生まれて発展を遂げたものではない。

富山藩は加賀百万石前田家の分家であり、二代目藩主前田正甫の時代に慢性的な藩の財政難から脱却するための官・民合同プロジェクトとして企画されたのが富山の売薬の起源と言われている。

ビジネスを成功させるためには、基本的な要素としての『技術』、『プロセス』、『人』をバランスよく活用する必要がある。この時の富山藩にはこの成功の要素を牽引するリーダーが揃っていた。

富山の代表的な薬として有名なのが『反魂丹』であるが、かねてよりかなりの薬ヲタクであった前田正甫は、この足利将軍家の持薬の効能を熟知した万代常閑という医師を岡山から招聘した。この『反魂丹』の製薬に尽力したのが経営者としての才も高かった薬種商・松井屋源右衛門である。

一方、藩主前田正甫は江戸出府の際に『反魂丹』の他藩の大名の間での評判を利用して、越中の売薬人が他国領内でも商いを可能とする『他領商売勝手』というトップダウンの政策を確立した。

売薬の営業のリーダー役を担ったのが八重崎屋源六という行商人であり、彼は厳選した人材を諸国への売薬行商人として割り当てた。

この時点で、『先用後利』と詳細な顧客情報を記載した『懸場帳』というビジネスモデルは確立された。彼らは、『懸場帳』によって『顧客』を『個客』に変えたのである。

その後、他の追随を許さない『越中富山の薬売り』というブランド価値を高めたのは、販売を担った行商人たちの勤勉で顧客志向に基づいた営業努力の賜物である。

彼らの誠実な営業活動は、顧客からの絶大な信用を勝ち取り『売薬さん』と呼ばれ、非常にリスペクトされた職業であった。『懸場帳』は後継者のいない売薬人にとっては、充分な退職金になるほどの高額で取引された。言わば個人情報の売買であるが、それが問題にならなかったのは単に時代の違いだけではなく、彼らの信用力の故であろう。

現在に比べ、一般庶民は移動の自由も制限されていた時代に、各地を巡回する売薬さんは各地で見聞きしたことを伝えるという文化・情報の伝達の役割も担うようになっていった。僻地においては、明治維新を売薬さんから初めて聞いたという人間もいたらしい。

話だけではまだ足りないと考えた売薬さんは、自ら歌舞音曲の芸を身につけて訪問した際に顧客をエンターテインしたそうである。江戸時代後期からは、当時の文化の中心地であった京都・江戸・大坂などの風俗・風景を描いた『売薬版画』をおみやげとして、顧客に配り大いに喜ばれた。後年は、その名残として紙風船を子供へのおみやげとして配っていた。

明治維新以降、この売薬による蓄えは富山県の産業資本として大いに役立つことになる。

このように、『越中富山の薬売り』のシステムやそれを支えた売薬人のスピリットはEコマースの世界でも充分通用する、あるいは現在でも実現できていない、単なる"meet a person's expectations"を超えた"more than expected"な徹底した顧客中心主義に貫かれている。

何事にも、この『オマケ精神』が重要であることを忘れてはいけない!

尚、タイトルの"The more things change, the more they stay the same"とは「変われば変わるほど、かえって変わらないもの」の意。

P.S.
予てから不自然に感じていたので、コメントの新旧の並びの順序を逆にしました。


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Comments

またまた面白い記事をありがとうございます。紹介エントリを書いて TrackBack させていただきました。(^_^)

Posted by: 【篠の風】 | May 13, 2004 at 07:58 PM

「山吹」の花名に関しても、追記を書いておきましたのでよろしかったらご一覧下さい。(^_^)

Posted by: 【篠の風】 | May 13, 2004 at 08:00 PM

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Tracked on May 13, 2004 at 07:56 PM

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