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May 19, 2004

Frau De Kowa-Tanaka ~ その2

<<< Frau De Kowa-Tanaka ~ その1

いくら廃刊本とはいえ、『ミチコ・タナカ 男たちへの讃歌』の内容のサマリをお伝えするだけでは芸がないので、個人的な田中路子体験を若干ご紹介する。とはいっても、彼女を直接知る知人がいるわけでもなく、大した話ではないが・・・。

以前ザルツブルクを訪れたときに、モーツァルテウムの石碑に『Michiko Tanaka-De Kowa』と刻まれた彼女の名前を見つけた記憶がある。彼女がモーツァルテウムで顕彰された理由は知らないが、同じ石碑には夫のユリウス・マインル、ゼルマ・クルツヴィーン・フィルハーモニカークレメンス・クラウスなどの名前が並んでいた。

日伊合作で八千草薫を主演にマダム・バタフライを映画化した『蝶々夫人』で、やけに妖艶なスズキを演じていた田中路子を観たことがある。この映画はローマのチネチッタ撮影され、当時の宝塚の淀かほる、寿美花代、鳳八千代などがゲイシャ・ガールズとして出演していた。この映画で監督補佐をしていたのが青山圭男で、その後METなどで『マダム・バタフライ』の演出をすることになる。この映画をいつ頃観たかは覚えていない。少なくとも、公開当時でないことは間違いないが・・・。

閑話休題、路子はマインルの薫陶と当時の知識人・文化人との交流で次第に中欧文化の粋とも言うべき教養を身につけていった。声楽の修行も順調に進み、音楽院卒業後は、グラーツで『マダム・バタフライ』でデビューを果たす。日本人であったせいも手伝ってか、蝶々さんが路子の主要な持ち役となった。その後、『恋は終わりぬ』(1935)を始めとして、映画界にも進出を果たした。路子自身、これは自分の実力ではなく、マインルという後ろ盾のお陰であったと認めていた。

結婚時に路子21歳マインル57歳と年齢の離れた二人は、路子の奔放な性格と爛熟・退廃した(良く言えば大人の文化)ヴィーンの社交界という環境が相まってか、普通とはかなり違った夫婦関係になっていく。そのうち、路子は夫マインル公認の愛人を持つようになる。

彼女曰く、「こちらから男の人を好きになったことは一度もなく、いつも相手の攻撃で火がつく」そうである。路子は言わば自らの不貞を詫び、マインルに離婚を申し出るが、彼は寧ろ年齢差のある結婚をしたことを路子に詫び、「自分(路子)を傷つけるスキャンダルに気をつければ、自由にしてよろしい」と告げたそうで、まるで芝居のストーリでも読んでいるような錯覚に陥る。そして、彼は路子を託すに足る求婚者が現れるまでは離婚は認めず、彼女にこれまで通りの妻の座を保証した。マインルは後年この約束を誠実に果たすことになる。

いやはや、ユリウス・マインル、実に大した人である。

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Comments

日頃より「うちのメゾ」をご愛顧賜わり洵に有難うございます。

しかしユリウス・マイヌルはご立派ですね。こういう話を蓄積すれば、ホーフマンスタールの台本への理解も一層深まるというものです。我が家の珈琲もそろそろ底をついてきましたので、今日は「成城石井」でJMを買って帰ろうという気にさせられました。

Posted by: 奥田安智 | May 20, 2004 at 12:42 PM

シンプル且つ素敵なブローシュアが出来ましたね。おめでとうございます。それにしも、ロゴ付きのWPh.サポートとは凄い!

田中路子さんの生涯に関しては、本書を読むまでは噂話レベルでの断片的な情報しか知りませんでした。マインルのことも「東洋の若い娘を興味本位で嫁にした、ジャポニズムかぶれの変わり者の大富豪」程度の認識でしたが、現代的な教養とKavalier精神を兼ね備えた希有な高潔の士だったようです。

改めて、ハプスブルク帝国の文化的な奥深さを認識した次第です。

Posted by: Flamand | May 20, 2004 at 03:35 PM

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