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March 12, 2004

The Complete OZU ~ 小津安二郎の世界

>続いての小津ネタ。かつて東芝EMIから、電子ブックで「The Complete OZU ~ 小津安二郎の世界」というCR-ROMが発売されていた。Amazonや東芝EMIのサイトで検索をかけても、出てこないので現在は絶版らしい。ビクターエンターテイメントからの「小津安二郎の世界」は全くの別物。

内容は、小津研究で有名なドナルド・リチーの「映画の中の日本~小津安二郎の世界」(山本喜久男訳)が1冊まるごとエキスパンド・ブックのフォーマットで収められており、「映画ダイジェスト」として全作品の解説、「キャスト&スタッフ」、「小津安二郎の東京」として小津にまつわる東京のさまざまな場所の紹介などから構成されている。エキスパンド・ブックのユーザ・インタフェイスの使い勝手は評価が分かれるところであるが、基本的には良く出来ていると思う。何故、生誕100周年を記念して再発売されなかったのかが不思議である。

この中で最も興味を引かれたのが、「小津を語る」と題して本作のために録画された、小津映画に関わりをもった人たちのインタヴューである。殆ど1994年に撮影されたもので、現在は故人になっておられる方もいる。

まずは、「一番バッター」の岡田茉莉子が語るところの小津映画の「四番バッター」(と、小津が自ら語ったらしい)である、もしかして日本で唯一の女優であった杉村春子。

「小津先生は、非常に肩幅の広い背中の大きな人だった。それを、東野さん(英治郎)は、『あれは古武士の背中だな』、と言っていた。」

「文学座の分裂の時(1963)、『俺が付いてる里見弴、僕も付いてる小津安二郎』、という電報をもらい、今でもそれが支えになっている。」

「演技に関しては、何も難しく考える必要はない、自然にやればそれでいい、と言われた。」

と語っている。


次は、晩年の作品でちょっと存在感のある脇役で出演していた須賀不二男。

「小津先生は、適当に不良で、無頼で、粋な人だった。」

「笠さんが演じた平山という役は、後年評論家が言うような小津さんの分身ではなかったと思う。」

「あの役柄の持っている真面目さや誠実さには憬れはもっていたかもしれないが、小津さん自身はあんな野暮ではなく、粋で大変な浪費家だった。」

「若き日の小津日記のなかの、『したきものは浪費、欲しいものは金、大声で叫びたい春の夕暮れ』には大いに共感できる。」

などと語っている。

最後に小津組の名カメラマン厚田雄春の弟子である川又昴。

「小津の、『映画には約束事はあるが、どう撮らなければならないという文法はない。もしも、文法というものがあるなら、これくらいの日本映画の規模なら監督は10人で賄える。自分のイメージに従って撮ればいい。カメラマンというのは活字になったシナリオを映画という絵に具体化するのだから、それを常に忘れるな』という言葉が身にしみている。」

「何故ローポジションか?自分の経験では、畳の目が照明の関係で撮ることが非常に難しく、小津さんはそれを良く分かっており、畳を撮るのを極力避けた。しかし、東京物語の上野の陸橋のシーンで、何故もっと東京を見せないのかと思った。やっぱりアオってビルの5~6階の屋根のあたりを撮す。小津さんにとって、最も安定したポジションはやはりローポジだった。」

「小津組はカメラの移動がないと言われていたが、実は移動は多かった。但し、揺らさない移動なのでスタッフ、俳優は大変苦労した。」

と撮影技術の面から語っている。

他に、桜むつ子、突貫小僧こと青木富夫、井上雪子、小津の甥にあたる長井秀行、プロデューサで里見弴の子息である山内静夫らのインタヴューが収められている。

久しぶりに摘み食いで見直してみたが、店主にかけられた「小津の魔法」は未だ解けず・・・。

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