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March 05, 2004

チェチーリア・バルトリの近況

日曜日に楽友協会でリサイタルを開いたチェチーリア・バルトリインタヴュー記事Die PresseにWalter Dobnerが寄稿していたので、内容を例によって超訳(?)でご紹介する。

最近、バルトリはサリエリ(「アマデウス」でのモーツァルトの敵役)作品のプログラムをよく取り上げている。インタヴューで、バルトリは「サリエリはイタリア時代のグルックの後継者であり、グルック自身も弟子であるサリエリの影響を受けており、新古典主派とロマン派を繋ぐ重要な作曲家」と位置づけている。

さらに、彼女自身の「Cosi fan tutte」におけるデスピーナ → ドラベッラ→ フィオルディリージという役柄の変遷の正当性(現代では全く違う声質を持った女声を充てるのが一般的)を、初演当時の18世紀のソプラノ達(Nancy Storace、Adriana Ferraresi )のレパートリに求めている。

近い将来、サイモン・ラトルとのザルツとベルリンでの「Cosi fan tutte」のプロジェクトが控えているようだ。2005年にはコヴェント・ガーデンでのアダム・フィッシャーとのロッシーニ、チューリヒでのマルク・ミンコフスキーとのヘンデルと続くらしい。ウィーンにおいては、オペラに関する決定したプランはないようである。

現在の彼女は「18世紀」にいたく魅了されいるようだが、「何週間か前にHans Werner Henzeと会った際、将来共同で何かをしようと合意した(?)」とのこと、ヘンツェと一体何をするんだ!?

店主のバルトリ体験は、東急文化村の「モストリー・モーツァルト」のリサイタルを聴いたのが初めてである。但し、大評判だった初来日のときではなく、2度目の来日時であった。

店主の記憶では、残念ながらその時点で生バルトリの声は壊れていた。恐らく、オーヴァーワーク(歌いすぎ)が原因であると思われる。

その後、チューリヒのオペラハウスでシーズンインのオープニング・ガラ(マチネーで、シャンパーニュ&軽食付きのとても高価なチケットだった)で、ヴィヴァルディを中心としたリサイタルを聴いたことがある。その時も、速いパッセージではあまり目立たなかったが、息が漏れるという現象には改善はみられなかった。

確か、アンコールでバルトリ母(シルヴァーナ)と「Cosi」のデュエットを歌っていた。

終演後、シャンパーニュを飲みながらバルトリと立ち話をしたことを記憶している。その時「Bunkamura」のTシャツを着ていた可愛らしい少女がいて、後にバルトリの妹であることが判明。その後、姉の後を追って歌手になったという噂を聞いたことがある。

店主のバルトリの声に対する印象は、知人で声の専門家が言っていた「高い声が出ないソプラノ」という言葉が当たっているように思える。彼女の声は、いわゆる現代の主流のメゾ・アルトの暗く重い声質はもっていない。従って、得意とするロッシーニにおいてすら歌えるレパートリはかなり限定される。タンクレディなどは絶対に歌わないであろう。

この「高い声が出ないソプラノ」というカテゴリの歌手は、彼女が特別な存在ではなく、かつてスペインの名花と称えられたメゾである、テレサ・ベルガンサもその典型である。

それにしても、バルトリに関する海外の批評でも、あの声の「壊れ」に言及している記事を読んだことがない。あの程度はOKなのであろうか?それとも、その後劇的な改善を見たのかは店主には定かではない。

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Comments

先日は思わぬところで、お久しぶりでした。
バルトリですが、初来日の時にたまたま?
聴きました。確か、シュターデがキャンセル
して代役だったかと思います。
その後、ベルリン・フィルのジルヴェスター
で歌っていたのを聴いたはずですが、曲目は
失念しました。
今シーズンはラトルと「Cosi」やりますね。
4月にあるようですが、すでに全席Ausのよう
です。
きっと録音されるのでは?

Posted by: ふーみん | March 09, 2004 at 10:02 PM

ふーみんさま、

ご来店ありがとうございます。先日は失礼しました。

そうです、バルトリの初来日は92年で離婚係争中のため
キャンセルしたシュターデの代役でした。
あの時は、メゾの新星あらわれる!と一部では
注目を浴びたものです。
(2度目の来日時は壊れてましたが・・・)

確か96年のジルヴェスターで、アンジェリーナ
(チェネレントラ)のアリアを歌ったはずです。

ラトル&バルトリなら、売れるんでしょうね、やっぱり。


Posted by: Flamand | March 09, 2004 at 11:55 PM

いつも考える材料を頂き有難うございます。
特にバルトリのファンという訳ではないのですが、彼女の舞台には、88年から03年12月のサリエリ・リサイタルまで、オペラ6回(内演奏会形式2回)、リサイタルはオケ伴ピアノ伴計6-7回ぶつかりました(当地では大変安い券も有るので)。個人的印象ですが、彼女の声に「荒れ」を感じた事は未だ有りません。もし声の「壊れ」が「息が漏れる」現象を指し、かつそれが、fioritoのパッセージで各音符間に置かれる息継ぎがexplicit過ぎる事を意味しているのでしたら、これは声の衰えと言うより、彼女の発声技術の問題ではないでしょうか。元々コロラトゥーラは、音の一粒一粒を力強く明確に吹き出す(スタッカート)と同時にパッセージ全体を継ぎ目無く滑らかに流す(レガトゥーラ)という矛盾した要求を含んでおり、極大雑把に言って、ロッシーニ・セリアで完成される伊系coloratura di forza では前者に、マイヤベーアが定式化する仏系colorature legereでは後者に振れる傾向は有る様ですけど、歌手、声楽教師により様々なケースが有るみたいです。前者のタイプは、Colbran、Pasta、Callas、後者はGalli-Curci、Robin、Dessay辺りなのでしょう。ツェルビネッタ、アミンタ等をレパートリーにするStreich等独系は後者と重なる部分が多い様です。バルトリが現在レパートリーの中心とする伊18世紀の唱法は、力強いカストラートを理想とする以上前者に近いと考えられ、彼女のスタッカートに傾斜した唱法に結び付いたブレス法は、そのlegerissimoな声質にも拘らず技術面では正嫡性さえ持つと言うことも可能かもしれません。ウルサ方声楽教師の方等から異議が出る可能性も有るものの(寡聞にして伊紙でも異端視する議論は見ていませんが。米誌では見ました。)、私は個人的には、あれだけ音楽的説得力が高いならば、問題視する必要は無いと思います。声楽技術の「正統性」はクセモノで、カラスのそれは「規範的」ベルカント唱法か、あのヘンな声が「壊れている」か否かも議論が有り得るでしょうから。バルトリはレパートリーとオペラ出演回数を慎重過ぎる位に抑えており、歌い過ぎという事は余り無い気がします。私はむしろ、初めの頃、舞台で聴く彼女の声の投射力の無さと、CDで聴く歌の目覚しさのギャップが大いに気になりましたが、近年は差が縮まってきたという印象を持っています。
デレデレ長くなり申し訳ありません。

Posted by: Gerhard | September 08, 2004 at 05:17 AM

Gerhardさま、

バルトリの歌う速いパッセージでは殆ど気になりませんが、遅いテンポでの息が漏れる発声は生理的に受け付けません。最近はそんなことはしてないとは思いますが、日本でのリサイタルのアンコールでカルメンのハバネラを歌った時は、「何を考えているんだろ、この娘は?」と訝ったもんです。いわゆる若気の至りでしょうけど。

チューリヒの舞台などで接した彼女はロッシーニ・メゾとしては中途半端な印象でした。現在他に誰がいると言われても困りますが。

セリア系のズボン役ならマリリン・ホーン、娘役ならヴァレンティーニ=テッラーニが個人的には実際に舞台で接したことのある理想に近いロッシーニ・メゾです。

Posted by: Flamand | September 08, 2004 at 01:41 PM

contralto musicoでは、私は個人的にはMartine Dupuyが好きでした。Horneの、往時のカストラートのvocalitaとはこういうものだったかも知れないと思わせる歌唱には、オール・ロッシーニのオケ伴リサイタルで瞠目させられたことがありますが、仕舞いにはドラム缶共鳴箱付きバズーカ砲みたいな威力に些かヘキエキ、≪Di tanti palpiti≫ではついBerganzaの(彼女は全曲を歌ったことはないと思いますが)お品の良い歌唱を懐かしく思い出してしまいました。Horneはフランスでもロッシーニ・セリア歌唱では絶対の評価を得ていますが、私は、唯一接した彼女のロッシーニ全曲の舞台はあろう事かロジーナだったもので・・・このタイプの声を現在継承しているのは、Ewa Podles辺りでしょうか。最近好評のBarcellonaはベルリーニのロメオで聴いただけですが、少なくとも当夜は高音に困難があり楽しめませんでした。新しい人では、私はケベックのMarie-Nicole Lemieuxに強い印象を受けました。
prima donna buffaでは、私もValentini-Terraniが好きでした。最近では、出来不出来があるものの、Kasarovaがまあ悪くないと思います。
それにしてもJ・Anderson, Cuberli, Devia, Horne, Valentini-Terrani, Dupuy, Merritt, Blake, Matteuzzi, Rameyと揃っていた80年代のロッシーニ熱気は、既に遠くなってしまった気がします。

Posted by: Gerhard | September 12, 2004 at 10:08 AM

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