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March 06, 2004

Barry Lyndon by Stanley Kubrick

昨年の終わりに廉価版になって発売された「バリー・リンドン('75)」のDVDを、かねてより手に入れていたが、長尺物の故なかなか観る機会がなかった。

この映画、おぼろげながらストーリを覚えているので、以前どこかで観たことがあるのだと思う。ただ、そのディテイルとなると記憶は非常に怪しかった。

スタンリー・クーブリックといえば、「ロリータ('61)」、「Dr. Strangelove('63)」(「博士の異常な愛情」という、超・珍訳の日本語タイトルは凄すぎ!)、「2001年宇宙の旅('68)」「時計仕掛けのオレンジ('71)」、「シャイニング('80)」などが、代表作として挙げられるが、「バリー・リンドン」は何となく置き去りにされている感もある。原作は勿論、ウィリアム・メイクピース・サッカレーの「The Luck of Barry Lyndon(1844)」(このLuckは勿論、good & bad)である。

ストーリそのものは、サッカレー一流の少々芝居じみた展開でそれなりにメリハリのあるドラマティックな内容である。しかし、映像化したクーブリックの意図か、映画そのものは他の作品に比べてかなりスタティックな印象を与えることが原因で、話題になりにくいのかも知れない。

ただ、この「バリー・リンドン」でのクーブリックの映像そのものへのこだわり様は半端ではない。18世紀の英国の風景画そのモノのようなショットがいくつもあるが、これが溜息が出るほど美しい。まるで、マスターピースの中の人物が動き出したのか?という不思議な感覚に囚われた瞬間が多々あった。店主は絵画史に関しては全くのトーシロ門外漢であるが、クーブリックが構想したのは、ターナーというよりはコンスタンブルかな?などと想像をたくましくしていた。

一説ではNASAのために開発されたといわれる、Carl Zeissのf0.7のレンズを用いて、ローソクの光だけで撮影されたというシーンでは当時の「闇と光」とは、どんなものであったかを実感させてくれる。

出演者のなかでは、プロシア軍大尉を演じていた「大学は花ざかり('58)」や「シベールの日曜日('62)」のハーディー・クリューガーが懐かしかった。

何度か決闘のシーンがあるが、当時はそれぞれ違った作法があったようで、1つの研究テーマにもなるのでは?と思わせるほど、興味深いものがある。それにしても、借金の取り立てにも一々決闘では、命がいくつあっても足りゃしない。

サッカレーの他の作品同様、感情移入をしづらい(許さない?)登場人物と、クーブリックのゆったりとした映像展開が相乗効果となっているため、この映画、物語から一歩退いて観るということが不得手なヒトには、3時間はさぞや退屈であろうと思われる。

サッカレーは19世紀を生きた人ではあるが、ストーリは7年戦争を挟んだ18世紀に設定されている。彼の社会や人生に対する辛辣な風刺の精神、クーブリックの素っ気ないほど体温の低い映像、バリー役のライアン・オニールの大根役者ぶり、全て店主が想像する18世紀の空気を大いに体感させてくれた。

誤解のないように言っておくが、店主の場合は主役が「大根役者」というのは、貶しているのではなく、むしろ褒め言葉である。特殊な場合を除いて、主役に芸達者で小賢しい芝居をする役者を充てて成功した例など殆ど知らない。

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