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March 02, 2004

私をスキーに連れてって その3
~ 2004年のスキー考現学 ~

<<< その1、<<< その2

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お待たせしました(なに、誰も待ってない?)。盛時に比べ、寂しげな今日この頃のスキー場に端を発した駄文がダラダラと続き物になってしまった。

どうやって、収拾をつけたものかと思案投げ首。瓶詰めコーラのついでというワケではないが、取りあえず「極楽スキー」('88)を発掘。

店主は本書のミーハーな内容ばかりを記憶していたが、巻頭で「極楽スキー宣言」という当時全盛期を迎えていたスキー状況をもとに、将来の在るべき姿としての「リゾート・スキー」を提言していた。その3つの条件として

1. 都会と別世界であること
2. 都会と同じ快適さ(amenity)があること
3. 長逗留すること

を挙げている。

リゾート・スキーの原点を当時の欧米のスキー場というより、戦前の赤倉、志賀、岩原に求めている「日本リゾート・スキー前史」はなかなかの読み応えがあった。

まだ長野オリンピックの開催も決まっていない時期ではあったが、当時SAJの会長であった堤義明氏を総帥とする西武グループのスキー場開発戦略にまつわるインサイド・ストーリ風な「西武の野望」も面白かった。

本書が予想した、苗場・横手山・竜王山(焼額山)を結んで巨大スキー・リゾートとするSeibu Super Ski Networkは未だ実現していないが、(ドラゴンドラでお茶を濁されたか?)日本には長期滞在型は定着しないことを看破し、短期滞在型のリゾート開発しか行わないという、西武のポリシーに対する考察は見事に当たっていた。

その後、この長期滞在型のスキー・リゾートの開発は、義明氏の義兄であるセゾン・グループを率いていた堤清二氏がサホロにおいてClub Medでチャレンジするが、ご承知の通り失敗。かつてETVで放映された「わが挫折を語る~日本経済への教訓」でも、自らこの経緯を語っていたことは記憶に新しい。

「良きことは外からやって来る」という我が国古来の伝統は、このスキーやリゾートに関しても当てはまる。バブル崩壊という一種のアクシデントはあったにせよ、表層は同じように見えてもその本質は見事に換骨奪胎され、独自の発展(衰退?)を遂げたことを、店主がその昔ツェルマットに滞在したときに思い知らされた。

スキーを取り巻く環境に関して、その最盛期を知るものにとっては一抹の寂しさを感じるものの、現在の状況を常態と考え、リファインしていくほうが妥当のような気がする。「あの夢よ、もう一度」は、スキー産業にも訪れるとは思われない。

この「極楽スキー」はその後、89年、90年と出版されたのだが、その内容と存在感でこの88年版を超えるものではなかった。

本書の「ゲレンデ・ミュシュラン」を始めとしたミーハー&おチャラケ部分の「東京中華思想」は徹底しており、「関西&関西人」を徹底的に排除している。但し、神戸は神戸女学院と甲南女子大の存在ゆえ、東京の一部という勝手な解釈。西のスキー場は評価の対象にもしていないが、「栂池は関西(大阪?)にくれてやるから、八方尾根を東京に返せ」と書いていたのは確か89年版だったか?

それにしても、当時のバブル絶頂期の世相を色濃く反映しており、全体を支配しているイケイケで元気の良いノリの内容を今読んでみると、なんとも微笑ましい限りである。




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Comments

ステキな思想です。テレマークに通じますね。トラックバックさせていただきました。

Posted by: ヒデ | May 07, 2004 at 09:51 PM

コメントありがとうございます。

戦前は、その出自は別として数はごく僅かながらも「富裕層」というのは存在していたようです。赤倉スキー場を育てたのが、関西のこの富裕層です。

バブルでは金持ちは生まれましたが、富裕(金持で、生活に余裕が有る)層が形成される前にバブルそのものがはじけてしまいました。

麻雀でいえば、世界中の点棒を殆ど集めたような時期でも、趣味は「狐狩り」とか「ポロ」と言う日本人はいなかったですもんね。

Posted by: Flamand | May 08, 2004 at 12:51 AM

的確な考察だと思います。
スキー場ビジネスの一部を担うものとして、もう一度考えるヒントになると思います。

Posted by: freeride | May 17, 2005 at 06:02 PM

freerideさま、

この古いエントリにコメントありがとうございます。
過分なお褒めの言葉を頂き、穴があったら入りたいくらいです。

愚考するにこの数年先に「団塊の世代」が大量に定年を迎えます。どの産業もこれをターゲットに狙っているようで競合は激しいと思いますが、今後のスキー・ビジネスもこれをみすみす指をくわえて見ている手はないと思います。

金を使うことに「罪悪感」を持っていないのがこの世代です。また、子供の世代になにがなんでも財産を残すという強固な意志も持っていないように思われます。

所謂、欧米型のスキーリゾートは無理としても、この人々がゆったりと気軽に楽しめ、かつ期待以上の満足感を提供できる環境と仕組みを作れば、あの寂しいスキー場は甦るような気がしています。個人的にもそうなることを期待しています。

Posted by: Flamand | May 17, 2005 at 06:23 PM

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